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08/10/2001 女任侠・別伝シナリオ24
東京信濃町・神崎組
机に受売新聞がドサッと置かれる。
机に座っていた神崎は、新聞を置いた相手を下から上に見上げる。
そこには凄んだ目で睨み付ける特高の亀井・平沢が立っている。

亀井「親分、お浜たちは、神崎組の、いや、御国のツラ汚しやな」
神崎「これは何かの間違いや」
平沢「親分が自分とこの身内を庇う気持ちは分からんワケでもないけど・・・・」

平沢、神崎の鼻に引っ付く程、顔を近づけ、

平沢「女任侠たちは、卑怯や、おまへんのか?」

顔を引きつらせて怒りを堪える神崎の顔。
平沢、神崎の顔から離れて、嘲笑しながら

平沢「今度ばっかしは、小泉親分もサジを投げたみたいやし、ワシらも全力挙げて取り組むで!」

神崎「う、うるさいわい!事実とちゃうことを捏造しやがって!」

亀井と平沢、顔を見合わせて笑い出す。笑いながら

亀井「親分、どこに捏造という証拠があるねん?」
平沢「ホンマ、面白いこというで」

語気強めて

平沢「こっちには、証人もいるんやで!」
亀井「そや、沢山の汽車の乗客が現場を見ているや!オマエらが好きな庶民やで、ショ・ミ・ン」
神崎「どうせ、お前らが脅かして、ウソを言わしてるんやろが!」
平沢「ナニィ?神崎!言うてエエことと悪いことがあるぞ!」

険悪な空気が事務所に流れ、甲彦たち子分が立ち上がる。
そこへ事務所玄関を叩く音。

兵頭「こんにちは、誰かいてまっか?」

その声に拍子抜けた平沢、亀井。

平沢「今日はこれぐらいにしといたるけど、今度来るときはお前をブチコミに来るときやからな!」
亀井「ケッ!分かったか!」

踵を返して出て行く2人。
平沢、玄関を荒々しく開ける。
驚く兵頭。それを無視して表の車に乗り込んで去る亀井、平沢。
それを見届けると兵頭、忍び足で開いてる玄関から入る。

兵頭「あの−」
甲彦「なんや!まだ用でもあるんか!」(平沢たちと間違えている)

甲彦、玄関に近づく。そこに兵頭。びっくりする甲彦。

甲彦「だ、誰や、オマエは?」

名刺を出しながら、引きつった顔の兵頭。

(場面が変って)

お茶のコップが机に置かれる。
ズ−ムが広がると兵頭と神崎が机を挟んで座っている。

神崎「そうですか、やっぱり、お浜たちは無実ですか?」
兵頭「はい、今は証拠を固めている段階ですけど」
神崎「ワシにも、その逃げおおせたヤミ米業者に会わせてくれまへんか?」
兵頭「それは、すぐには無理でっせ」

兵頭、顔を突き出して小声で

兵頭「そうかて、神崎はんには、特高の尾行がいつも付いてますがな」

頭を掻き、膝を叩いて悔しがる神崎。
兵頭、ポケットから紙切れ取り出しながら

兵頭「でも、他の人やったら・・・」

取り出した紙切れを広げる兵頭。それには住所が書いてある。
手を伸ばそうとする神崎に

兵頭「その代わりと言ったらなんですけど、ワテもお浜はんに会いたいんですワ」

伸びた手が少し止まるが、神崎考えて

神崎「分かりました、アンタを信用しまひょ」

メガネを触り、紙に書いている住所を読む神崎。読みながら

神崎「おぅ−い、甲彦、タバコを買ってこい・・・霧島やど!」

甲彦、元気な声で「へい」と言うと慌てて出て行く。

兵頭「どないしたんでっか?」
神崎「いや、ちょっとした合図ですワ」
兵頭「合図?」

(場面が変って)

タバコ屋の公衆電話に小銭を入れる甲彦。
袂から取り出したメモ帳をツバをつけた指で捲り、電話を架ける。

(場面が変って)

黒電話が鳴る。
白髪の老婆がでる

老婆「もしもし・・・・あっ・・・ちょっとまってや」

老婆、受話器を持ったまま大声で「お浜は−ん、電話でっせ−」
2階に向かって叫ぶ。

(タバコ屋の甲彦、耳を受話器から離しながら顔を顰め)

甲彦「相変わらず。このオババは声が大きいなぁ」

(かなえに杯を与えた後の乾物工場2階)

大森「お婆はんが下から呼んでまっせ」
お浜「へ−い、すぐに行きます」

お浜、2階から降りてきて、老婆の持っている電話に替わる。

お浜「はい、替わりました・・・あら、甲彦はん・・・どうしたん、定期連絡はさっきしたのに」

(タバコ屋の甲彦)

甲彦「すぐに東京に戻ってくれまへんか?親分に何か策があるらしいんで」

(乾物工場)

お浜「すぐにどっか?」

側にいる老婆が気になるにか、老婆を背にして受話器を手で隠す、お浜。

お浜「私はこれから軍部の所にいきますねん、そないに親分に言うてください」

受話器から甲彦の喚く声。静かに受話器を置くお浜。チンという静かな音。
心配顔の老婆。
無言で2階へ上がるお浜。それを階段下まで追いかけて見つめる老婆。
2階に上がったお浜は一人で出かける支度を始める。
大野ユカリと大森いち子が近づいて

大野「なにか信濃町であったんでっか?」
お浜「・・・・神崎親分に何か策があるから帰って来い、って」
大森「策って、どんな策でっか?」
お浜「さぁ、知りまへん」

首を傾げる2人に

お浜「オトコはんの建てる策には、いつもワテら女組は泣かされてるから、相手にしませんでしてん」

笑顔になった大森とユカリ。

お浜「そんなことより、かなえに、はよ準備し−やと言うてくださん」


08/08/2001 女任侠別伝23
受売新聞本社。
30畳程の社会部デスク。
机の上には山積みされた書類。
天井の大きな扇風機の風が書類をなびかせているが、
8人の記者たちは、各々、団扇で扇ぎながら電話をかけたり、書類整理している。

奥の机に座っている、ビン底メガネの痩せた小柄な男が
背中を丸めて、ハサミで足の爪を切っている。

小泊(記者A)「編集長、昨日の記事の神崎組、女任侠のことですが・・・」
浅井(ビン底メガネ)「どうした?」
小泊「ちょっと、気になりまして、調べたんですけど、お浜たちは、ヤミ米業者とは
面識がなかったようなんです。」
浅井(ビン底メガネ)「それがどうした?」
小泊(記者A)「それって、まずいのではないかと・・・」

浅井(ビン底メガネ)は足の爪を切るのを止めて

浅井(ビン底メガネ)「ナニ?軍部の発表に逆らって、おまえの調べた事を載せるってか?あ−っ?」
小泊(記者A)「そうです。真実と違うことですし、当然・・・・」

突然、浅井(ビン底メガネ)は小泊(記者A)の頭を人指しで小突き

浅井編集長「お前は、まだ青いなぁ。新聞は売れてナンボなんや。そんな危険なマネしたら
ワシらメシの食い上げになるんやで!わかってるんか?」
小泊記者「・・・・メシのタネのためにウソを書けって言うんですか?」
浅井編集長「な、なにぃ!いつからお前は神崎組の人間になったんや?新聞社は中立公平・・・」

それを聞いていた兵頭(記者B)は,憤然として立ち上がり、腕組しながら

兵頭(記者B)「そ、そら、ワシかて、自分で調べた真実を読者に訴えたいで。でも、
軍発表の反対の 記事を載せても、それを読んだ国民が、どう判断するかは別問題やで」
浅井編集長「そ、その通りや、ナンボ真実かどうか知らんけど、読者あっての新聞やで」
小泊「わかってます。けど、大本営発表だけでは、国民も判断のしようがありませんがな。」
兵頭「それやったら、軍発表だけでなく、客観的に双方の意見を載せたらどうや?」

浅井編集長、後ろ手で歩きながら、ゆっくりと2人の前にやってくる。

浅井編集長「あのな、双方の意見というたかて、女ヤミ米業者はみんな殺されてるんやで、
しかも、もう片方の、お浜たちも何処に居るのかもワカランしがな。」

得意そうな顔の浅井編集長を尻目にして、兵頭、少し考えて

兵頭「おい、小泊、お前、さっき、ヤミ米業者のことを調べたというたなぁ」
小泊「はい、殺されたヤミ米業者の仲間が逃げ延びて、ワシの知り合いの所に居るんですワ。」
兵頭「そうか!それやったら、早速、取材して言質を取るんやで。ワシはS会の方を当たるワ。」

それを聞いた小泊は瞳を輝かせ

小泊「は、はい、」

目と目で合図した兵頭と小泊は、荷物を持って出かけていく。
浅井編集長は、唖然と見送る。

浅井編集長「お、おい、兵頭、小泊・・・く、くそっ!ワシに逆らうヤツは今度の人事で仕返ししたる!」


08/03/2001 女任侠別伝22
静かな漁村風景。昼すぎ頃。
朝の漁から帰ってきた漁船が、プカプカと列をなして港に繋がれている。
その小さな漁港脇にお浜達が乗っていたトラックが止まっている。

白髪の背の低い老婆が新聞を片手に港を歩いている。
乾物工場に入るとトコトコと階段を上がる。
乾物工場の2階の部屋で女任侠達が出かける準備をしている。

白髪の老婆が部屋に入ると、歯の欠けた口を大きく開けて言った。

老婆「お浜はん・・・ちょっと」

手招きをする老婆。

お浜「この度は、何から何まで、大変お世話になりました。」
老婆「いやいや、ワテらS会のカタギが神崎組を助けるのは当たり前や、気にせんとってや。
お浜はん、そんなことよりもやな、この新聞を見てみ」

差し出された新聞を広げて驚くお浜。
それに気づき、沢がお浜の所へ来た。

昼メシの残りのスルメの干物を噛みながら

沢「何が載ってるんでっか?」

お浜は新聞が破れるほど握り締め、震えながら顔を上げた。
沢は、その姿に驚き、スルメをゴクンと飲み込み
お浜の持っている新聞を覗いた。

沢「えっ?なんやこれは!」

その大きな声で部屋にいた女任侠者が集まりだした。

ユカリ「どないしたんや?」
大森「どれどれ、え−っと、・・・ナニ!青森駅でヤミ米業者、女任侠の身代わりに射殺される?」

お互いの顔を見回す女任侠者達。その顔は皆、動揺している。
そんな中、一人だけ冷静なユカリが新聞を読み上げる。

ユカリ「8月3日午後3時ごろ、国鉄青森駅構内において、女ヤミ米業者10名が神崎組の女
任侠 と間違われ、帝国陸軍により射殺される事件があった。大日本帝国陸軍の発表によると
神崎組の女任侠集団は、政府の決定に逆らい、臆病風邪の連中を野に放つため
信濃町事務所から網走に汽車で移動との情報を察知。軍関係者は反逆者の女任侠
集団を捕らえるべく、青森駅で待機していた。しかし、卑怯にも女任侠の首謀者・お浜は
女ヤミ米業者を 自分達の身代わりに仕立てて、青森駅に向かわせた。」

松「な、なんやて?この新聞、ウソばっかりが書いてあるやんか!」

ユカリ「警戒中の軍は、事情を聞くため、このヤミ米業者を連行しようとしたところ、
急に暴れ出し、軍関係者に暴行を加え、逃走したため、発砲に及んだ。」

大森「こんなウソがまかり通るんか!」
かなえ「昨日の3時ごろというたら、もうこの竜飛岬に着いていたころですよ。」
松「しかも、ワテらはヤミ米業者に会った事ない・・・・」

ユカリ「このヤミ米業者達は神崎組の女任侠の擬装に手を貸していたことから、S会の人間で
ある可能性が高いとのこと」

沢「えっ?殺されたのは、ホンマにS会の人たちなんかなぁ?・・・」
お浜「いや、誰であっても、こんなことがあってはいけないのよ!」

一同、下を向く

お浜「ワタシ、今から軍に行ってくる」
ユカリ「お浜はん、それはいけません」
大森「そうやで、今行ったら、相手の思うツボやで、無事で帰れるわけありまへんがな」
お浜「いや、どんな事情にせよ、私達に間違われて殺された人達の為にも、ここは
正々堂々と、わたしら任侠者がシメシをつけなあきまへんさかいにな。」

少し間があって

ユカリ「遠山はんたちのことは、どうなりますんや?」
お浜「これからは、ユカリ姐さん、姐さんを中心に皆を連れて行ってください。お願いします」
ユカリ「そ、それは、出来ん相談でっせ。」
大森「そうやそうや、お浜はんがいなかったら、・・・・・」
お浜「大森姐さん、ワテがこの女任侠の責任者というのはわかってます。しかし、ここは
誰が責任者とか、中心者とか言うてる場合とちゃいます。皆が中心者だす。」
大森「お浜はん・・・」
お浜「ワテらの師匠がいつも言うたはりましたやろ。・・・一人立つ精神って」

ユカリ苦渋の選択に意を決して

ユカリ「分かりました。どうせ、任侠者になったときからカタギ衆の為、正義の為に捨てた命や。
どこで朽ち果てようが、ワテらが師匠の顔ニドロを塗るマネはできまへんさかいにな。」
お浜「おおきに・・・」
ユカリ「かなえ・・・こっちに、おいで」

後ろの方で見守っていた、任侠見習いのかなえが、遠慮がちに出てきた。

ユカリ「おまえは、お浜はんと一緒に行きなさい。そして、女任侠の精神をお浜はんから学んでき
なさい。」
松「それは、エエこっちゃ。・・・ええやろ?お浜はん」

笑顔で肯くお浜

松「そや、ユカリ姐さん」
ユカリ「なんや?」
松「折角、ワテらと同じように正義のためにかなえも行動するんやし、ここはもう任侠見習いを
外したってもエエのと違いますか?」
大森「そやな、もう、任侠見習いは卒業してもエエなぁ。今日からは正式に女任侠にしたって」
ユカリ「ワテからも頼みますワ」

お浜、一同を見渡して

お浜「皆、かなえを正式に女任侠・ひまわり組に入れてもエエか?」

一同、肯きながら拍手する。

お浜「そういうことや。今からかなえを、女任侠として杯を与えるで」
かなえ「あ、ありがとうござい・・ます」

感無量のかなえ、涙汲む。

沢「そうと決まれば・・・・ほれ、」

そう言うと沢の袂から杯を2つ取り出す。

沢「ホンマはここでサケを酌み交わすんやけど・・・・このお茶で・・・」

白髪の老婆「沢はん、ちょっと待ちや」

言い終わるやいなや、仏壇の前にチョコンと座り、ちょっと手を合わせてから
仏壇の奥からドブロクの一升ビンを取り出したすと、老婆はニヤリと歯の欠けた口を開けた。

沢「おばちゃん、エエ物があるやんか」
老婆「こう見えてもワテかて、精神は若い任侠者やで」

一同、大笑い。
それにつられて、また大きく歯の欠けを見せた。





07/30/2001 女任侠・別伝シナリオ21
青森駅。憲兵隊が一列に並んでいる。
軍靴のアップ。軍靴が一定の場所を行ったり来たりしている。
軍靴が立ち止まると、下から舐めるように画面が上に動き、憲兵隊長鈴木の顔のアップ。
鈴木がタバコを咥えると、誰かの手が伸び、すかさず火を点ける。
鈴木が大きく煙りも吐くと、その方向にマッチを消している谷友のニヤケタ顔。

谷友「ヒヒヒヒッ、もうじき来まっせ、あいつらが」
鈴木「ホンマに次の汽車に乗ってるんやろな!」
谷友「お浜たちが、仙台駅にいたことはわかってますさかい、大丈夫だす。」

黒い煙が山間から見えてくる。
走る汽車の車輪。
汽車が青森駅に着く。
一斉に憲兵たちが手荒に乗客をかき分けて、お浜たち女任侠集団を探す。

防空頭巾を被った女の集団が大きなリュックを背負い汽車を降りると
線路沿いに走り出す。

憲兵が笛を吹く。(ピ−ピッピッピ−)

憲兵1「コラ−!止まれ!」

止まらない女の集団。
憲兵たちが一斉に小銃を構えるやいなや、走る女集団に向かって撃つ。
線路沿いに次々と倒れる女たち約10名。


谷友「や、やったで!」

走る谷友、鈴木、その他憲兵隊たち。
倒れている女達の防空頭巾を次々と剥ぎ取る谷友、鈴木。
しかし、どれも女任侠ではない。
撃たれたリュックからは米が零れ出している。

谷友「ち、ちくしょう。ヤミ米の運び屋か!」
鈴木「おい!谷友、これはどういうことだ!」
谷友「あ、・・・いや・・・こ、これは・・・」
鈴木「キサマの情報はいつもアテにならんなぁ。」
谷友「・・・・・・・」
鈴木「この後始末はどうしてくれるんや?ただのヤミ米運びを銃殺したとなると新聞に叩かれるんやど!どないしてくれるんや?オ−?谷友!」

暫く考えた谷友は
谷友「アイツラは汚い連中でっせ。自分達が助かるために、こんな罪のない女をダミ−に使うなんて」
鈴木「ふっ、そういうことか。」
谷友「そうですねん。悪いのはお浜たち女任侠ですワ。イ−ッヒッヒッヒッ」

場面は変わって
走るホロ車のトラックが山のガタガタ道を走っている。
運転しているのは大野ユカリ。キモノをたくし上げて運転している。
ホロ車のなかで揺られているお浜たち女任侠集団。
頭をブツケル大森。

大森「痛っ、も、もう少しマシな道はあらへんのんかなぁ。」
沢「文句をいうたらアカンで。こないして車に乗れるだけでも有りがたいこっちゃ」
大森「そ、そら、そうやけど・・・」
松「だけども、何で急に八戸駅で車に乗り換えたんでっか?」
お浜「それはね、新聞を読んで私達のことを知ったカタギ衆からの知らせなのよ。」
松「汽車であのまま行ってたらワテらは捕まってたんでっか?」
お浜「ええ。谷友と大岩寺の連中が軍部と組んで私たちを網走に行かせないようにして
待ち構えているらしいのよ」
沢「へぇ−、しかし、カタギ衆がよくそんな軍部の情報を掴みましたなぁ。」
大森「そら、任侠者は誤魔化せても、地を這って生きているカタギ衆は誤魔化されへんよ」
沢「ワテも聞いた事があるワ。軍部のエライさんが呑み屋でグダを巻いてて、
ポロッと今していることなんかをしゃべったり、円タクに乗っているときに何でもかんでも極秘情報
しゃべるアホな軍幹部もいるらしいんや」
松「軍のエライさんの目には、庶民なんてゴミのようにしか映らへんからポロッと喋ってしまうんやな」
大森「へぇ−、どっかの宗教団体の幹部と同じやな」

車は土煙を上げながら山道を超えて走っていく・・・・。






07/22/2001 女任侠伝・別伝20シナリオ
塹壕の中。暗い。
背を屈めながらトンネルの通路を入る福本達。
奥には20畳程の空洞があり、小さなランプが灯されていた。

薄暗い明かりに照らされるシワくちゃな顔の老婆。
草の担架で運ばれてきた小梅をみて、歯の無い口で念仏を唱えだす。

赤ん坊をあやしていた母親の顔が引きつる。
その横には汗をかいて仰向けに寝ている白衣の初老が横たわっていた。
それを介抱している看護婦、小梅を見るとすぐに側に寄って傷口をみる。

サクラ「みんな、大丈夫やで、この人たちは、ホンマ物の兵隊さん達や」
サクラは一人一人に声をかけて回る。皆、顔を小刻みに震わせている。

鯉川「これは一体、どうしたんや?」
サクラ「はい、私たちは地元の病院の者ですが、本土に行く最終の船に
乗り遅れまして・・・」
福本「この人は医者なんか?」

横たわっている白衣の初老の男性を見て言う。

サクラ「はい、福島豊雄先生です。・・・先生も過労で・・・」

腰を下ろしていたニセ将校2は

ニセ将校2「ねぇちゃん、ワシの手も見てや。折れているみたいやしな。」

その側にニセ将校1の大腿部に包帯を巻いていた看護婦に言った。
それを聞いた大柄の世田谷がニセ将校2をニラミ

世田谷「おい!おっさん!今度は逆に折ったろか?」

ニセ将校2は目を大きく開けて無言で顔を左右に振る。

福本「兎に角、傷の手当てをしたら、アメさんが来るまでに逃げなアカンなぁ。」
メガネ「ふ、福本さん、逃げると言っても何処にいけば・・・」
世田谷「そら、鯉川はんのサイコロやで」
ネガメ「サイコロ?」
世田谷「そや、こういうときこそ、博徒のカンが・・・」

それを聞いた鯉川が、自慢げにサイコロを懐から取り出すが、

福本「アホ抜かせ!冗談いうてる場合とちゃうやろ!」

首をすくめる世田谷と鯉川、鯉川はあわててサイコロを隠す。

ニセ将校1「おい、・・・オマエら・・何処に逃げてエエのか分からんのやろ?」

傷口が痛むのか、汗を噴出しながら、途切れ途切れにしか話せないニセ将校1。
一同、そのニセ将校1に顔を向ける。鯉川が近づき

鯉川「おい、オマエ、何か知ってるのんか?」

痛みで歪んだ顔に不自然な口元でニヤリと笑う。

ニセ将校1「そら、ワシら自由のきく兵隊やったからな、この島のことは隅までしってるで」
ニセ将校2「おい、あんまりしゃべるなや。コイツら、ワシらをコケにしよったんやからな」

勝ち誇った顔の将校2

世田谷「おい、コラ!安全な場所を知ってるんやったら教えんかい!」

将校2、大柄の世田谷が胸倉を掴んだので、ビビリながらも

ニセ将校2「ヘ、ヘンだ!オマエらはワシらの正体を知ってるから、生き残ってもワシらはどうせ、銃殺やしな。オマエらだけで行けや。」
ネガメ「こうしたらどうですか?この人たちと取引しましょ。安全な場所を教えてくれたら、ニセ将校のことは黙っておく・・・」
ニセ将校1「・・・オマエらを信用せいってか?」
ネガネ「そ、それは・・・」

とまどうネガネ。くやしがる世田谷。下を向く福本。
突然、銃を構えてニセ将校2に近づく鯉川。

鯉川「よっしゃ!そんなに死にたいなら、ここで楽にしてやるで!」
ニセ将校2「ま、待ってくれ!」

折れた手をブラブラさせながら、命乞いをするニセ将校2

ニセ将校1「わ、わかった!・・教えたる。その代わり、ワシらの将校の服とオマエら軍服を交換してくれや。」
鯉川「軍服の交換?」
ニセ将校2「そ、そやな。それがエエ。そしたら、ワシらも裏切られることないな。」
ニセ将校1「そや、もし、生き残っても・・この将校の服を着ていたら銃殺・・やからなぁ。」

小梅「へ、兵隊さん・・・この人たちの・・言うことは信用したら・・あきまへん・・」
サクラ「お姉ちゃん!しゃべったらアカン!」
小梅「この人たち・・は、・・以前にも・・将校の軍服を着て・・この村に来て・・本土に帰る船に・・特別に乗せると・・・言うては・・ゴホゴホ・・食べ物を持っていった・・けど、全部・・ウソやった。」
サクラ「お姉ちゃん!」
小梅「私らは・・ゴホゴホ・・将校の服で・・・騙されてたんや・・ゴホ!」
サクラ「もう、エエって!お姉ちゃん!もう・・・」

泣き出すサクラ。

小梅「サクラ・・ごめんね・・人は格好で・・判断したら・・ゼイゼイ・・アカンって
いつも・・お姉ちゃんが言うてたのになぁ・・」
サクラ「ううん、お姉ちゃんは悪くないよ!」

それを聞いていた白衣の福島は起き上がり

福島「わ、ワテが・・着ましょ・・その軍服を・・」
サクラ「・・・先生!」
福島「大丈夫・・こんな・・身体やけど・ゼイゼイ・・みんなの役にたちたいしな・・ゴホ!」
福本「よし!ワシも交換したる!」
ネガネ「福本はん!そんなことしたら・・」

福本、ネガネの言うことを最後まで聞かないで、自分の軍服を脱ぎ、ニセ将校1に渡す。
とまどうニセ将校1だが、受け取ると、ニセ将校2も福島の白衣を奪い取る。

サクラ「先生!兵隊さん!エエの?ウソを教えるかも知れないのに」
福島「サクラちゃん、エエんや。・・人は最後には人を信じないと、人間として死んでいけへんもんや」
小梅「せ・・せんせい・・」
福島「なんや?小梅ちゃん」
小梅「私・・・人間として・・・しんでいける?」
福島「小梅・・・」

小梅の容態を見るが出血がひどい。

小梅「私・・・あの人たちに・・・騙されて・・しんで・・いくの?」
福島「いいや・・、小梅ちゃんは・・ゴホゴホ・・ちゃんと正義を語ったやろ?」

小梅、意識が遠のきながらも小さく頷く。そして・・首が横を向く

サクラ「お姉ちゃん!お姉ちゃん!ワ---!」

福島、小梅の首の動脈に手を当てて様子を見る。顔を振る福島。
一同、無言のまま下を向く。

CM

フィクションです。


07/22/2001 女任侠伝・別伝19シナリオ
ジヤングルの奥に逃げ込む福本、鯉川、ネガメ、世田谷の4人。
迫撃砲や機関銃の音が序々に遠ざかる。

鯉川「この辺に塹壕があるはずや!急げ!」
ネガメ「鯉川さんは、こんなジャングルでも、よく迷わないんですね。」
鯉川「そら、ワシは博打打ちやけど、本職は飛騨高山の木こりやから、
   山のことは、任さんかい!ヘヘヘッ」

鼻を摩りながら自慢する鯉川。

鯉川「あそこや!」

指さす方向に草や樹木で隠された塹壕の入り口がある。
鯉川が木で編んだ扉を開けると、鉢巻を巻いたモンペ姿の若い女性2人が
竹やりを持って突いてきた。

(ヤァ!ヤァ!)

鯉川「おっと、危ないで!」

寸でのところで身を交わす鯉川。銃を構える世田谷、メガネを手で制する福本。

女性1「あっ!日本の兵隊さん!」
女性2「す、すみません!」
女性1「ケ、ケガはありませんか?」

鯉川、鼻を摩り

鯉川「大丈夫や、こんな不意打ちなんか、鉄火場ではいつものことやしな」

ホッとする女性2人。安堵の顔。

鯉川「ここには、キミらだけか?」
メガネ「この島では民間人は全員、本土に非難しているはずですよ」
世田谷「そしたら、なんで居るんや?」

女性達、無言・・・。

女性1「あなた達はどこの連隊ですか?」

不審に思う福本たち。

世田谷「おねぇちゃんよ一、なんで、そんなこと聞くんや?」
女性2「あ、あの一・・・」
女性1「サクラちゃん!」(厳しい顔)
サクラ(女性2)「だけど・・・小梅姉ちゃん!」

福本「なんか、ワケがありそうやな・・・よかったら聞かせてくれるか?」

2人の女性が下を向いていたが、意を決して長女の小梅が

小梅(女性1)「実は・・・」

その時、塹壕の中から将校姿の男が2人が出てきた。
将校を見て、本能的に敬礼をする福本たち4人。

将校1「オッホン!貴様達は、どこの部隊かね?」
鯉川「はい、自分達は第2連隊の者であります!」

将校2人が福本と目が合うと、視線をそらし、顔を隠すように口に手を当てる。
福本、将校の顔を睨みつける。「あっ!」と思いだす。

福本「おい!おまえら!将校ってのはウソやな!」
世田谷「福本はん!な、何を言い出すんや!将校はんに向かって」
福本「ナニが将校やねん!こいつらは、納豆屋のしぬ時間で賭けをしてた兵隊や!」
将校2「貴様!ワシらが将校とちゃう証拠でもあるんか?」
福本「ワシが証人や!」
将校1「こしゃくな、おい!お前!コイツを撃て!反逆者は銃殺や!」

将校1はメガネに言った。どうして良いかうろたえるメガネ。
銃を構えながら、顔を見合う世田谷、鯉川。

将校2「貴様!上官の命令が聞けんのか!ようし、俺が銃殺にしてやる!」

将校2が腰の拳銃に手をかけ、福本に銃を向けたとき、後ろから声がする。

小梅「この人たちは将校ではありません!ドロボ一です!」
将校2「き、貴様!」

小梅に向かって発砲する将校2。
倒れる小梅。駆け寄るサクラ。

サクラ「お姉ちゃん!」

将校1も腰の銃に手をかけて福本に向けると、構えていた鯉川が突然、将校1を撃った。
うずくまる将校1。

将校2「くっ、しね!」

鯉川に発砲しようとしたとき、大柄の世田谷が将校2の手を掴んだ。

将校2「なにをするんや!」
世田谷「あんさん、民間人を撃つような将校は、いてまへんで!」

世田谷がニセ将校2の腕を捻じ曲げると、ボキッ、音がした。
転げながら、のたうち回るニセ将校。喚いてる。

世田谷「最初に塹壕から出てきたんは、女の子やった・・・お前ら恥ずかしくないんか!民間人を盾にしやがって。」

福本、メガネが倒れている小梅の傷口を見る。脇腹から血が出てる。小梅の手を握るサクラ。

サクラ「お姉ちゃん・・・・」
小梅「こ、この兵隊さんたち・・・は、きっと・・信頼できる・・・よ」
サクラ「お姉ちゃん、しなんとって!」
福本「大丈夫や、傷は浅いよって」

メガネが軍嚢から包帯を取り出し、手当てをする。

鯉川「兎に角、塹壕の中にはいろうや」

まだ、手が折れて喚いているニセ将校2。
ニセ将校1は大腿部から血を流していた。

鯉川「こいつら、どうする?」
福本「アメリカさんに見つかってもアカンから、中にいれよや。」

メガネと世田谷がニセ将校に肩を貸している。
鯉川、塹壕の草で編んだ戸を蹴破ると、それに小梅を乗せて塹壕に入った。



CM

フィクションです。

07/22/2001 女任侠伝・別伝18シナリオ
硫黄島、連隊長のテント。(連隊の作戦本部)
書類や地図を焼いている。
あわただしく器材類を壊している。

軍曹「連隊長殿!用意ができました。」
連隊長「通信兵!」
通信兵「はい!」
連隊長「参謀本部に連絡をしろ」
通信兵「はっ、はいっ!」
連隊長「これより第2連隊は、本土の防波堤となるべく・・・・」

通信兵はモ−ルス信号を送っている。

連隊長「最後の一兵まで戦い抜くため、一時、山間部まで後退する。以上!」
軍曹「連隊長殿!」
連隊長「うむ・・」
軍曹「通信兵!」
通信兵「はい!」
軍曹「無線機を破壊せよ!」
通信兵「は、・・はい!」

通信器材を壊す兵士たち。

牢屋。
軍曹たちが入ってくる。
檻を開けてアメリカ兵を出さすが、状況を察知してか、出てこないアメリカ兵たち。

軍曹「早く、表に出させろ!」

兵士に急がす軍曹。それでも檻からなかなか出ないアメリカ兵。苛立つ軍曹。

軍曹「ええいっ、こうやって出させるんだ!」

軍刀を抜くとアメリカ兵に切りつける。絶命するアメリカ兵。
血の付いた軍刀を片手に隣りの檻に入る。脅えるアメリカ兵。無言で刺す軍曹。
騒ぎ出す他の6人のアメリカ兵。鉄格子を掴む福本。

軍曹「早く出ろ!」

脅えながら出てくるアメリカ兵、6人。続いて福本も出る。
その時、軍曹が軍刀を福本の喉元に近づけて

軍曹「貴様は、それでも戦争反対と言えるのか?」
福本「ワシは任侠者や。嚇しでは言うこと聞かんで。」

軍刀を鞘に収める軍曹。

外では整列した兵士たちが行軍を始めている。
(第3小隊!前ぇ−すすめ!、第4小隊・・)
ジャングルを行軍する日本兵達。

その連隊の最後尾に重い荷車を足枷をさせられたアメリカ兵6人と福本が引っ張っている
メガネが足を引き摺りながら福本に近づく。

メガネ「福本さん。エライ格好ですね。」
福本「お前こそ、偏平足は大丈夫なんか?」
メガネ「福本さんらしいなぁ。」
福本「なんでや?」
メガネ「そやかて、人の心配してる状態と違うでしょ、今の福本さんは」

足枷の福本をジロジロと見るメガネ。

福本「任侠者はな、自分のことよりも、人のことが優先するのが、任侠の精神や」
メガネ「ふ−−ん。そんなものですかね」

鯉川「おい!メガネ。お前、足は大丈夫か?」

福本に気づかず近寄る鯉川、世田谷。

メガネ「鯉川さんも任侠者なんですか?」
鯉川「あほ!そんな訳ないやろ?・・・あれ?福本の兄貴やんけ!」
福本「元気そうやな、世田谷も」
鯉川「なんで、上陸した後の砲撃でバラバラになったのに、逃亡と言われたんや?」
福本「さぁな。上の考えてることは判らん」
世田谷「軍曹が言うてたけど・・・福本はんと納豆屋は臆病風邪に感染したていうてたで」
メガネ「納豆屋やったら判らないけど、福本さんが臆病風邪だなんて・・」
福本「納豆屋は臆病風邪とちゃうど!」
メガネ「な、何もそんなに怒らないでもいいでしょ!・・・冗談ですよ・・」
福本「納豆屋は・・・正義の人として、しんでいったんや・・・」

一同「ええっ?」

鯉川「しんだてか?」
メガネ「我々は戦争をしてるんですよ!誰か知ってる人がしんでも、当たり前ですよ」
世田谷「そやけど・・・しぬのが当たり前ってのはワシ、イヤやなぁ。」
メガネ「イヤと言っても・・・」
鯉川「もう、止めろや!」
福本「・・・納豆屋は日本の国家に殺されたんやで」
鯉川「兄貴よ、そんな、難しい話はもう、エエやんか。これから先の事を話そうや」
世田谷「これから先のこと?」
鯉川「そや、しんだ者は生き返らへんから、生きてる福本の兄貴の事が大事やろ」
世田谷「そやな、福本はんが、アメ公と同じではな・・・」
福本「ワシはアイツらと同じでも構わへんで。アメさんにも生きる権利はあるからな」
世田谷「ワシらにも生きる権利はあるやんか!アメ公をころさな、ワシは生きられへんがな。」
福本「そんな考えやからアカンねや」
世田谷「そ、そない言うたかて・・・」
鯉川「また、難しい話にもどってるやんか。ええ加減にしてや、兄貴も」
福本「そないに言うなや。誰かが、正義を語っていかなアカンからな」

溜め息をつく鯉川。


急に戦闘機の近づく音。(スピットファイヤ−が射撃掃射をする。)
逃げ惑う日本兵たち。撃たれて倒れる兵士たち。
まるで、定規で線路を描くようにな、戦闘機からの射撃掃射。

軍曹「散れ−!」

スピットファイヤ−の掃射が3、4度続く。遠ざかる戦闘機。休む間もなく

ヒュルヒュルヒュル・・・・ドン!
前方に敵がいるのか、迫撃砲が隊列に落ちてくる。
飛び散る土煙と肉片。迫撃砲の後、マシンガンの音。

この混乱に鯉川が福本の足枷を銃で撃ち、外す。
ジャングルに隠れる鯉川たち、福本は倒れた日本兵の銃を持ち
また、道に戻る。足枷で立ち往生のアメリカ兵4人。2人はもう倒れている。
福本が4人のアメリカ兵に近づくと観念するアメリカ兵たち。
福本、足枷を次々と撃ち、アメリカ兵を自由にさせる。
アメリカ兵は福本に十字を切って逃げる。
それを見届けると福本、鯉川たちを追いかける。

逃げるアメリカ兵を後ろから撃つ日本兵。
迫撃砲が炸裂する。土煙が去ったあとにはアメリカ兵2人が走っていた。


CM

フィクションです。


07/22/2001 女任侠伝・別伝17シナリオ
硫黄島。牢屋。

日本兵が食事の配膳をしている。

兵士1「椀を前に出せ!」

水のように薄いスイトンが柄杓で、ひと掬いだけ入れられる。
牢屋の暗闇の中、配膳の兵士を睨む福本。無表情な兵士。
両手で椀を持つと、一気に飲み干す。

兵士1「食べ終わった者から、椀を前に置け!」

各々の鉄格子から椀が出てくるが、納豆屋の檻からは椀が出ない。
不審がる兵士。檻の中を覗く。

兵士2「納豆屋! はよ、せんかい!」

納豆屋が大粒の汗を出して、壁に寄り倒れている。

兵士2「ちっ!」

兵士2は檻の中に手を入れて、納豆屋に配膳されたひと掬いのスイトンの入った椀を
獲ると、兵士1、兵士2が取り合うようにしてゴクゴクと飲んだ。

兵士1は舌なめずりをしながら、椀を檻の中に転がす。

兵士1「食事、終了!」

バタンと閉まる重い扉の音。暗闇。

福本「おい!納豆屋!・・・」

隣の土壁を叩く。反応なし。

福本「どないしたんや!・・・おい!」
納豆屋「(弱々しい声で)ワシ、寒いねん・・・ゴホゴホッ」
福本「メシをなんで食わんねん!」
納豆屋「ワ、ワシ、さっき、・・親父の作った納豆・・食べたから・・いらんねん・・。」

福本、納豆屋の異常に気づく。

福本「(大声で)コラッ!・・しっかりせいや!・・・おい!納豆屋!」
納豆屋「福本はん・・・」
福本「なんや?」
納豆屋「親父がな、・・ワシの作った納豆は・・まずいと言うんや・・」

福本、納豆屋の幻覚に付き合う決意をする。

福本「そんな事、ないど!」
納豆屋「そうやろ?・・・福本はん・・・ワシの作った・・納豆は、日本一うまいで・・」
福本「そら、そうや、・・・ワシもお前の作った納豆を食べたけど、美味かったで!」
納豆屋「・・おおきに・・・ワシ、・・これから納豆・・売りに行くワ・・」
福本「何処に行くんや?」
納豆屋「水戸の駅前で、いつも買うてくれるおばぁちゃんがいてるんや・・ハァハァ」

(オムニバス)(BGM・伊藤敏博の「サヨナラ模様」)
山間の道を荷車を引いている納豆屋。町並みを歩く納豆屋。通りがかりの人に挨拶する。
駅前で客と会話しながら納豆を売っている。皆、笑っている。
川側で弁当を広げている納豆屋。脇に子供たちが走っている。飯粒を口につけながら
その子供たちを見ている。子供が集まる。納豆を子供に与える納豆屋。
笑顔の納豆屋・・・(BGM・フェイドアウト)

現実に戻る。ドンという音。
牢屋で倒れている納豆屋。
福本「おい!・・どうしたんや!」
納豆屋「福本はん・・・ワシ・・ラッパ・・持ってくるの・・忘れた・・」
福本「ラッパ?」
納豆屋「納豆・・売るときに鳴らす・・ラッパやねん・・・。」
福本「それやったら、ワシがもってきたるで!」

突然、叫び声を出す福本。鉄格子を椀で叩く。カンカンと大きな音。
騒然とするアメリカ兵たち。

重い扉が開く。

兵士1「ウルサイど! 静かにせんとメシ抜きやど!」
福本「(半泣きになりながら)おい!納豆屋が・・!納豆屋が・・・!」

兵士2納豆屋の檻を見る。

兵士2「あっ、もうくたばったか?アカンがな」
兵士1「よっしゃ、賭けはワシの勝ちやな!明日のメシはワシのもんやで」
兵士2「ちくしょう!」
福本「賭け?・・・何をさらしてるんじゃい!ボケども!コラ−ッ!」
兵士2「やかましいんじゃい!今度は福本、お前がいつくたばるかや、フン!」
福本「な、納豆屋は、まだ、しんでへんど!」

もう一度、檻の中を見る。動かない納豆屋。

兵士1「動かへんがな、もうしんでるやろ」
福本「おい!納豆屋!ラッパは欲しくないんか!おい!納豆屋!」

少し動く納豆屋。

兵士2「おっ?生きとるど、コイツ」
兵士1「シブトイ奴やなぁ。」
福本「おい!お前!・・・か、賭けに勝ちたかったら・・」

鉄格子にへばりつきながら、兵士2を手招きする福本。
福本、兵士2に耳打ちする。驚く兵士2。福本、また耳打ちする。納得の兵士2。

兵士1「ナニしてるんや?お前ら」
兵士2「な、なんもない・・ほな、まだ生きてるから・・ワシはまだ負けてへんで」

不満顔の兵士1、ニタリ顔の兵士2。
兵士1「コラッ!福本、納豆屋がしんだら・・すぐに呼べよ」

出て行く兵士1と2。

福本「納豆屋!・・・すぐ、ラッパを吹かしたるからな・・・うっうっうっ・・(泣く)」
納豆屋「(細々した声で)・・なっと、なっと−なっとう・・・」

兵士2が静かに入ってくる。

兵士2「(小声で)おい、納豆屋、ラッパやど・・おい、納豆屋」
納豆屋「・・・・・」(動かない)
兵士2「おい、福本、ラッパ吹かせたら、元気になると言うたのに、コイツ、動かんど」
福本「ラッパを口の所まで持っていったってくれ」

兵士2、シブシブ、檻を開けて納豆屋の口にラッパをつけさせる。
口がピクピクと動く。

兵士2「おっ?動いた」
福本「今晩、もたせるためには、ラッパの音を聞かせてやってくれ、そしたら、吹きよるで」

兵士2、怪訝な顔をしながらも、ラッパを吹く。
プ−プッ、プ−プッ−
納豆屋が目を開ける。倒れたままラッパを掴む。せき込む納豆屋。

納豆屋「・・・お客さん、・・まいど・・おおきに・・・」

ラッパを口につけ、力無くラッパを吹こうとする納豆屋。
プップ・・・・ラッパが床に落ちる。だらりとする手。

福本「(泣き叫ぶ)納豆屋−!」


CM

フィクションです。


07/22/2001 女任侠伝・別伝16シナリオ
霞ヶ関の官僚の応接間。40畳程の部屋にはシャンデリア。
奥の壁には日の丸の旗が広げて掛けてある。その上に軍服姿の陛下の写真。
その下に次官の大きな机。肘掛けイスに後ろ向きに座っている次官。
横の壁には豪勢な絵画。
中央のソファ−に苦虫を潰したような顔の神崎と涼しい顔の坂口。

応接間のドアが開く。

次官の秘書「閣下殿、只今、小泉組長がお越しになられました。」
次官「うむ。」

小泉組長、福田(小泉組の番頭格)が入る。

小泉「これはこれはお揃いで」

ソファ−に座る小泉、福田。
後ろ向きの次官がイスを回転させて、正面に向かい合う。

次官「さっそくですけど、小泉はん、今回の件はどうゆうことでっか?」

小泉はゆっくりと出されたコ−ヒ−を飲みながら

小泉「閣下、エエ、コ−ヒ−飲んでますなぁ。これ、ブラジルですな」

次官はまた、イスをクルリと回し後ろ向くと、たまらず神崎が

神崎「この度は、小泉親分初め、次官殿にはご迷惑をお掛けいたしまして・・・」

横目で坂口を見る神崎。

神崎「こ、これ、坂口!お前も謝らんかい!」
坂口「・・・(無言)・・・」(平然としている)
神崎「坂口!」
小泉「まぁまぁ、神崎はん、この坂口は、今はワシとこに預かったお人やし、ワシから
言うワ。」

坂口はちらっと小泉を見る。

小泉「坂口はん、アンタはオトナの判断が出来る人やろ?」
坂口「ワシ、何か親分はんに謝らなアカンこと、おましたんかいな?」
福田「何を言うてるんや!坂口はん、あんさんのしたことがワシらにとってエエことなんか?」

坂口、福田を睨みつけ、ゆっくりと

坂口「小泉はんは、いつも改革が必要やと言うてはりますなぁ。それで国民に人気があるのとちゃいますんか?」
福田「そ、それが、どうしたと言うんや?」
坂口「今の任侠は木っ端役人の言うことしか聞かないからアカンと言うてたのは、どなたでしたか? おお−っ? ふ・く・だ・はん!」
福田「こ、木っ端役人って、・・・口が過ぎるで! 次官殿に謝れ!」

すかさず、坂口は立ち上がり

坂口「じゃかましいんじゃい!オノレら、口先だけの任侠者なんかい!アホのひとつ覚えの
ように、次官殿、次官殿ってか?なめてるなよ!」
神崎「こ、これ、興奮するな!」
坂口「神崎親分、こんな連中とは袂を分かち合いまひょや!」

小泉、少し間を置き

小泉「坂口はんの言い分は分かりましたワ。そやけど、・・オトナのケジメだけは
着けておくれやす。」

また、コ−ヒ−を飲む小泉。

坂口「分かりました。」

小泉の置いたコ−ヒ−カップの目の前の机に短刀を、ドンと突き立てる坂口。
小泉、コ−ヒ−カップに手を掛けたまま、坂口を睨む小泉。睨み返す坂口。2人は無言。

坂口は左の小指を少し舐めると、短刀の横に置き、なにも言わず短刀を倒した。
福田の膝に物体が飛ぶ。
福田は飛んで来た物が何か分からず、指でつまんで目の前に差し出すと
血の零れる坂口の小指であった。

福田「あわわわわ−っ」

驚き小指を放り投げると、次官のイスの近くに転んだ。後ろ向きのままの次官。無言。

坂口「なんやったら、この首、今切ってくれてもエエんやけど、どないします?」
(小泉を睨む坂口)
小泉「・・・・(無言)・・・・」

やっと、コ−ヒ−カップから手を離す小泉。

神崎「坂口!」
坂口「ほな、帰りまひょか、親分」

戸惑う神崎。そそくさと応接間から出る坂口。追いかける神崎。

ドアの閉める音。

福田「親分、あんなのでエエんでっか?」

次官がイスをクルリと回して、落ちている小指を踏みつけ、立ち上がる。

次官「やっぱり、神崎組とは連立出来まへんなぁ。小泉はん」
小泉「まぁまぁ、まだ、アイツらの利用の仕方もありますから」
次官「ヤケドせんうちに、消しなはれや。」
小泉「今度の選挙が終わったら、神崎組は用済みですから・・・」
次官「あまり、神崎に暴れられると、ワシらのオイシイ所が無くなるからな」
小泉「次官殿、今回の臆病風邪の件は、ワシの手柄にさせておくれやす。
次官殿には借りが出来ますけどな。」
次官「そんなぐらい、おやすい御用やで、神崎組の手柄だけにはさせたらあきまへんからな。」
小泉「そうですねん。おいしいとこはワシが貰ろときますワ。」

小泉はまた、コ−ヒ−をおいしそうに飲み出した。

CM

フィクションです。


07/22/2001 女任侠伝・別伝15シナリオ
蒸気機関車が山間の駅で停車している。
その改札では、乗客目当てにスイトン屋が湯気を出して売っている。
その側では米を持ってる農夫に疎開してきた若い母親がキモノをリュックから取り出し
交渉している。母親の横には2人の幼児が座ってる。

母親「この着物は友禅どっせ!もっと、この子の為にお米をおくれやす!」

ホホが汽車の煤煙で汚れている母親が必死に交渉している。
納得しない農夫。

そんな光景の中、汽車を降り、新聞を買いに走るかなえ。
蒸気機関車のスシ詰め状態から開放されたお浜たち女任侠は外で思い思いのところで休憩している。

かなえ「ちょっと、ごめんやす。」

人込みをかき分けて、かなえが帰ってくる。
改札近くのベンチに座っているお浜に新聞を渡す。

新聞の見出し一面に

「帝国海軍、敵、米英艦隊を撃破」
「硫黄島の守備隊は鉄壁」

新聞をめくるお浜。社会欄に

「神崎組・女任侠と小泉組の大立ち回り」

どこかの学者の意見に

「任侠者が臆病風邪でいいのか?」
「問われる小泉組と神崎組の連立」

大森いち子「いろんなこと書かれてますなぁ。」

スイトンをほお張りながら言う。
イモを片手に松竹あきら(女任侠)

松竹「坂口はんのことは書いてありますか?」
大森「そやな、一番心配やで。」
お浜「坂口はんのことは・・・何も書いてあらしまへん。」

かなえは水筒からお茶を出して配っている。

大森「そしたら・・・金ちゃんのことは?」

その言葉を聞くと、かなえが大森のキモノにお茶を零す。

かなえ「す、すんまへん、大森姐さん。」

大森いち子は、それには気にせず、続けた。

大森「それでも、坂口はんも神崎組から引き抜かれて、小泉組の頭になったから
ちょっと心配してたんやけど、やっぱり坂口はんはホンモノやったな。」
松竹「そやなぁ。ワテら女任侠の網走行きを、我が身を盾にして行かせてくれたもんね」
お浜「坂口はんは、小泉はんと刺し違える気でっせ」

それを聞き、スイトンを噴き出す大森いち子。
イモを喉に詰まらせて、胸をドンドンと叩く松竹。あわてて、かなえの出した茶を飲む。

松竹「刺し違え?」
お浜「ええ、そうだす。坂口はんが小泉組の頭になった時から、任侠者として、しぬことを考えていましたんや。」

大森と松竹はお互いの顔を見る。2人ともポカンと口を開けている。

汽車の出発の合図が鳴ると女任侠集団はまた、汽車に乗り込んだ。

CM

フィクションです。

07/22/2001 女任侠伝・別伝14シナリオ
硫黄島守備隊陣地。
月夜に照らされ、2人の兵隊が足を引き摺りながら入ってくる。
見張りの兵隊が

兵士1「止まれ!貴様たちはどこの兵か?」
福本「自分たちは第2連隊の者であります(敬礼しながら)4日前の砲撃で迷ってしまい帰還が遅れました。」
兵士2「よし!中に入れ!」

陣地の中に入ると塹壕から声が掛かった。

鯉川「おい!福本はん!・・・納豆屋も一緒か?」
福本「お前も生きてたか!他の連中は?」
鯉川「みんな、元気に昨日、帰ってきたで」
福本「そうか・・・良かったな!」

その声につられてメガネ、世田谷が現れた。

メガネ「福本はん!ご無事で・・!」
世田谷「納豆屋もケガはないか?」
納豆屋「へぃ、なんとか・・・」
歯の無い口を開けて笑う納豆屋。

再開を喜んでいる5人に軍曹が怒鳴る。

軍曹「福本、納豆屋!はよ、来い!」
鯉川「(小声で)ウルサイのがおるし・・・また後でな」

守備隊連隊室(テントの中)
無線機や地図が置かれている。軍曹が連隊長に2人の帰還を報告する。

連隊長「貴様達は、この4日間、何処で遊んどるのか!」
福本「いえ、自分達は・・・」
軍曹「言い訳無用!」
連隊長「お前たち2人は、どっかで臆病風邪に感染したんと違うか?ウン?」
福本「連隊長殿!そんな・・・必死で帰ってきました!」
連隊長「貴様たちのことは、官僚閣下からの報告で、身内に臆病風邪のヤツがいると
先程に連絡があったんや」

うろたえる納豆屋。

連隊長「納豆屋、お前の兄貴は2人共、網走刑務所に入ってるんやろ?」
福本「お、お前・・・」
連隊長「水戸の田舎で戦争反対と言うてる病気持ちの息子を持つオヤジは、肩身が狭くて
自殺したんやな。わかってるんやで。」

突然、泣き崩れる納豆屋。

連隊長「福本!貴様は神崎組の任侠者やそうやな。」
福本「・・・・!」
連隊長「任侠者のくせに、貴様の弟分の遠山は臆病風邪やないか!」
福本「えっ?」
連隊長「日本では任侠者の臆病風邪が神崎組で流行ってると、大騒ぎらしいで。」

薄汚く笑う連隊長。

連隊長「どうせ、キサマ達は逃亡しようとしてたが、大方、食料が無いんで帰ってきたんやろ」

福本、連隊長の予想外の言葉に動揺が隠せない。

連隊長「どうやら、図星のようやな。コイツらを逃亡容疑で独房に入れておけ!」
軍曹「はい!」(敬礼をすると2人を連れて行く)

土壁の牢屋に連れて行かれる。独房は10個程しか無い。5個ずつ向かいあうように独房があった。
福本、納豆屋が隣同士の独房に入れられると入れ替わりに2人のアメリカ兵の捕虜が、
後ろ手に縛られて出される。
騒ぎだす2人のアメリカ兵。怒鳴る日本の軍曹、兵隊達。外に連れ出す。

他のアメリカ兵の捕虜は福本、納豆屋を静かに、そして、キビシイ目で見ている。

納豆屋「ふ、ふ、福本はん!こ・・ここは・・ほ・・捕虜の・・ろ、牢屋・・でっせ!」
福本「そのようやな」
納豆屋「ア、アメさん達、こ、・・恐い顔して・・ワ、ワシらを見てますなぁ・・」

福本、状況がわからない。辺りを見渡す。頑丈な鉄格子と土壁。
土壁にある、窓替わりの小さな鉄格子から、外が騒がしくなったことが分かる。
(外の声は聞き取りにくい)

(整列!・・・軍靴の駆け足の音。・・・アメリカ兵の叫び声・・・)

静寂の牢屋内。鉄格子を握り締めるアメリカ兵達。暗闇の中、目だけが光っている。

先程連れ去られた2人アメリカ兵の叫び声が大きくなる。
軍曹の声が微かに聞こえてくる。(かまえ−・・・・て−・・・)
その瞬間大きな発砲音が木霊する・・・。(バンバンバン)

牢屋のアメリカ兵捕虜が、その音を聞くと崩れるようにして泣き出し、口々に
日本兵に対する恨みを口にしだし、福本と納豆屋に向かって言った。
(オ−マイガ−!、ファックユ−!クレイジ−・・!など)

納豆屋「ふ、福本はん!な、・・何が・・あったんでっか?」
福本「・・・どうやら・・・ワシらが独房に入ったさかいに、居場所が無くなったアメリカさんが銃殺になったようやな・・・」
納豆屋「えっえっ?・・・そ、・・そんな・・そんなアホみたいな話がありまんのんか?」
福本「日本は・・・今・・・狂ってるで・・」
納豆屋「ほ、・・ほんなら・・・ワ、ワシらかて、日本人に殺されるんかな?・・」
福本「納豆屋!ワシらは、一人も殺さんと、また、しなんと日本に絶対に帰るで!」
納豆屋「そ、・・そんなこと・・・出来るんでっか?」(震えながら)
福本「絶対に帰るで!そうせんと、こんな狂気な世界を誰が伝えるんや?納豆屋!
必ず、日本に帰って伝えるんやで!人間の悪を戦う為にや!分かったな!納豆屋!」
納豆屋「そんなこと言うたかて・・ワ・・ワシ・・臆病者やし・・・」(泣き出す)
福本「アホ!お前には勇気ある兄貴がいてるんやろ?」
納豆屋「勇気?」
福本「そや、今のご時世に戦争反対と言えるのがホンマの勇気やねんど!」
納豆屋「ホンマの勇気って・・・」
福本「平和な時に戦争反対と言うのは誰でも言えるけどな、日本国中を敵にまわしても
今のご時世に戦争反対を言うてるお前の兄貴やワシとこの遠山のことや−!」

福本の叫びが月まで届くような勢いであった・・・。


CM

フィクションです。

07/22/2001 女任侠伝・別伝13シナリオ
ジャングルの奥地。
アブがブンブン飛んでいたが、大きな葉っぱに留まると
何処に居たのかトカゲがそのアブを呑み込む。
トカゲの居た大きな葉っぱが揺れると、トカゲは逃げた。

その大きな葉っぱをかき分けて歩く鯉川、世田谷、メガネ。
静かなジャングルに時折、鳥の鳴き声。

世田谷「こ、鯉川はん、ワシら迷ったんかなぁ?」
メガネ「所詮、サイコロのお告げは、この程度ですよね!」
鯉川「ウルサイわい!お前ら、ワシのサイコロの出目で生き残ってるんやろが!」
メガネ「私は偶然に一緒になっただけですよ」
鯉川「おい!メガネ!ワシは付いてきてくれと頼んだ覚えはないど。イヤならどっか行け!」
世田谷「鯉川はん、今、そんなこと言うてる場合とちゃいまっせ。兎に角、ここから
はよ、出まひょや。」

メガネが(しっ!)と言うと耳をそばだてる。何か音がするらしい。
メガネが手招きをする。不信に思いながらも鯉川、世田谷が付いて行く。

メガネ「やっぱり!」
世田谷「水や!」
3人は岩肌からチョロチョロと零れる湧き水を勢いよく、へばり付くようにして飲む。

鯉川「ふ−、生き返ったで」
世田谷「メガネよ、よく水があるて、わかったな。」
メガネ「そら、サイコロより弁証法的学習の成果ですよ」
鯉川「な、なんや?それ?」
メガネ「いや、唯心論は・・まぁ、エエですがな」
鯉川「あっ!メガネが関西弁使いよった」

笑う鯉川、世田谷。ハズカシそうなメガネ。

世田谷「あ−、久し振りに笑ろたで」
メガネ「しかし、福本さんと納豆屋さんは何処に行ったんでしょうね」
鯉川「あの砲撃から3日は経つけど・・・。ワシのサイの目に従わんからアカンねん。」
世田谷「まだ、そんなこと言うてるんでっか」
鯉川「そやかて・・・」

メガネは、また(しっ!)と言うと皆、草むらに隠れる。
バサバサと葉っぱをかき分ける音。
草の間から鯉川は目を凝らすと、アメリカ兵の姿。
3人に合図を送り、身を伏せさせる。
近付く、葉っぱをかき分ける音。何かアメリカ兵の会話が聞こえる。
世田谷の草むらの前を通りすぎるアメリカ兵の軍靴。泣き出しそうな顔の世田谷。
カメの子のように首を縮めるメガネ。
草むらの中でサイコロを転がす鯉川。
通りすぎる足音。静寂が戻る。

鯉川がメガネと世田谷を起こすと、アメリカ兵の行った方に連れて行く。
驚く世田谷、メガネ。強引な鯉川。呆れながらも付いていく2人。

(場面は変わって)
ジャングルの岩陰に福本と納豆屋が隠れている。
仰ぎながら水筒の底を叩くが水はない。水筒の飲み口を舐める納豆屋。
その横でいこいを吸う福本。

納豆屋「福本はん、腹減ったなぁ・・・」

無言でタバコを吹かせる福本。
納豆屋はリュックから、ラッパを取り出し、磨いている。

福本「納豆屋、よくそんな物、持って来れたな。」
納豆屋「へい、これはオヤジの形見ですねん・・・」
福本「そうか・・・」
納豆屋「ワシ、この戦争が終わったら、しんだオヤジの代わりに水戸で納豆を
作んですワ。・・・オヤジの作った納豆は日本一やったんです。」
福本「ワシは関西人やし、あんまり納豆は食べへんけど、そんなに美味いんか?」
納豆屋「そらもう、アゴが外れまっせ」
福本「そやけど、お前、水戸出身やのに、関西弁が上手なぁ。」
納豆屋「ワシ、3男坊やから、大阪に丁稚に出てましてん。・・・ホンマは
オヤジも兄貴達に納豆屋を継がそうと思うてたらしいんやけど・・・」

言葉を選ぶ納豆屋に不思議がる福本。

納豆屋「まぁ、エエですやん。ほな、また鯉川はんたちを探しまひょや」

立ち上がる納豆屋。タバコをもみ消し、微笑みながら立ち上がる福本。


CM

フィクションです。



07/22/2001 女任侠伝・別伝12シナリオ
神崎組事務所内。

お浜「さぁ、みんな、忘れ物ないか?」

長刃を持つ女任侠集団。口々に「へい」と小さく肯き、答える。
女任侠者のそれぞれの顔付きには、決意が込められていた。

大森「みんな、揃ったようですワ」
お浜「ほな、出発しようか!」

お浜が神崎組の引き戸を開けると、遠藤甲彦が暗い顔をして立っていた。

甲彦「お浜姐さん・・・」
お浜「どないしたんや?」

深刻な顔の甲彦がうな垂れる。

ユカリ「甲彦!ジャマやし、どいてんか!」
甲彦「そ、それが・・・」
沢「じれったいヤツやなぁ。・・・どないしたんや?」

そこに小泉組の番頭格の福田が6、7人の若い者を連れて入ってくる。

お浜「福田はん・・」

驚くお浜達、女任侠者。

福田「姐さん方、ここはひとまず、ワシの意見を聞いて網走に行くのを止めてもらえまへんか?」

松竹あきら(女任侠者)が肩をイカラせて甲彦を睨みつけて、

松竹「おうおう! 甲彦! これは、どういうこっちゃ!」
福田「あきら姐さん、ちょっと、待っとくれやす。」
松竹「親分はん!これはワテとこの問題だす!何であんたらの意見を聞かなあきまへんねや?」
福田「ワシとこの親分と神崎はんとのオトナの話し会いの結果だっせ!」
お浜「神崎はんと小泉はんの・・・?」
福田「そうだす。ここは高度な政治判断ちゅ−やつでして・・・」
大森「何がコウドのセイジハンダンやねん!あんまりワテらをバカにすんなよ!」
ユカリ「甲彦!これはホンマの事なんか!」

甲彦はオドオドしながら

甲彦「へい、ワシもさっきに聞かされて・・・神崎組の男親分同士でも、エライ、モメてたらしいんですが・・」

騒ぎ出す女任侠集団。それを止める福田の若い衆。小競り合いが続く。
そこに神崎組の坂口が自分の子分3人を連れて登場。

坂口「みんな,静まれ!」

騒ぎが収まる。

大森「坂口はん!小泉組の頭になったアンタまでワテらを裏切るつもりでっか?」
ユカリ「誰のオカゲで頭になれたんや!ハッキリせいや!」
坂口「・・・お浜はん」
お浜「なんでっか?」
坂口「はよ、網走に行きなはれ!」

坂口がそう言うや否や、福田の若い衆を殴りつけて、道を開ける。
坂口の若い衆も福田の若い衆に殴り掛かる。

坂口「あ、・・後は、ワシがなんとかしますさかいに・・・はよ、行きなはれ!」
お浜「坂口はん・・・!」

大森はそれを見て、お浜を促し走り出す。続く女任侠達。
騒ぎの中、松竹あきらだけが戻って来て、その場でオロオロしてる甲彦に

松竹「オマエだけは許せん!」

と言うと甲彦のアタマを思い切り叩いて、また、走ってお浜達を追いかけた。


CM


フィクションです!



07/22/2001 女任侠伝・別伝11シナリオ
アメリカの軍艦からの砲撃。
海に落ちる零戦。
艦砲射撃の轟音が響く防空壕にうずくまる福本達、兵隊。

しばらくして、砲激音が遠のき、防空壕から出る兵隊達。
ジャングルのあちらこちらに、砲激の後が残ってる。
直撃弾を浴びた防空壕には、無残な日本兵の姿。
それを横目に歩く兵隊達。

納豆屋「こ、ここは・・じ・・地獄やな。」
世田谷「ワシら、ここでしぬんかなぁ・・・」
鯉川 「運が無い奴だけがしぬんや。ハンかチョウか、博打と同じやで」
メガネ「そしたら、鯉川さんは、どっちでっか?」
鯉川 「さっきも、どっちの防空壕に入ろうかサイコロで決めたんや。
あっちの防空壕やったらイチコロやったで。」
福本 「お前、そんなので決めてたんか?」
鯉川 「そうや、自分の命は自分で守らなアカンからな。」
納豆屋「サ・・サイコロで・・き・・決めるんでっか?」

サイコロを懐から出し、

鯉川 「ワシはコイツと一緒になってからは負けなしや。」

サイコロを手の中で転がしながら自慢する鯉川。

メガネ「そんなのナンセンス・・・おっと、英語は違反でしたね。」
鯉川 「ナニ言うとるんじゃ!・・・ワシには博打の神様が付いて守ってくれるんや。」

ムキになる鯉川に皆、微笑み、集合地点に着いた。

軍曹「整列!・・・番号!」

いち、にい、さん、よん、ご・・・・

世田谷、隣の納豆屋につぶやく。

世田谷「さっきより、10人は少ないで。」
納豆屋「ワ・・ワシら、運ように・・ふ、船から降りたとこ・・や・のに・・なぁ。」

軍曹 「これより−、前進して−、上陸する−、敵を−、迎え撃つ−。前へ−進め!」

歩き出す兵隊たち。

ヒュルヒュルヒュル・・・(音が近付く)
辺りに炸裂する。
蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う兵隊達。

木の陰に倒れこむ鯉川。
サイコロを取り出して手の中で振るが、サイコロが零れ落ちる。

鯉川「半か?・・・こっちや、みんなこっちに来い!」
世田谷「こっちやと言うたかて、どっちや!」
納豆屋「こ・・鯉川は−ん!」
福本「そっちは、弾が落ちてる方やんけ!」
メガネ「ナ、ナンセンス!」

辺りが砲撃の土煙で暗くなる。

CM

フィクションです。


07/22/2001 女任侠伝・別伝10シナリオ
網走刑務所。
冷たい足音が響くなか、カメラはひとつひとつの監獄の中の囚人達を映し出す。
遠山の檻の前で足音も止まる。
遠山は上半身裸で、あちこちにアザや傷がある。

白川「久しぶりやな。遠山」
遠山「・・・・!」

看守が檻を開けると中に入る白川、看守。
扉を閉める音。

白川「そんなに怖がらなくてもエエやろ?」
遠山「な、なにをしに来たんや!」
白川「キサマはえらく粘ってるそうやな」

檻の中を歩き、遠山の読んでる本(法華経の知恵)を見つけると

白川「こんな本を読んでるから、臆病風邪が治らんねや!」

その本で遠山を殴る。本を破り捨てる。

白川「フフフッ、キサマは何も知らんかもしれんけど、
   キサマの代わりに福本は硫黄島に行ったんやで」
遠山「えっ?福本兄さんが?」
白川「福本は勇敢な男や、今、一番戦闘の激しいところに志願して行きよったワ」

戸惑う遠山。

白川「それだけやない。今度のキサマの騒ぎで、小泉親分もエラク迷惑してるんやで」
遠山「・・・?」
白川「キサマが戦場に行かへんから、神崎組と小泉組がギクシャクしてきてるねん。
   連立してる小泉はんも神崎組を助けたがってたんやけど、それが官僚達に
   睨まれてな、小泉はんとこの任侠者は全部、最前線に連れて行かれたワ」
遠山「そんなの、ウソや!ホンマ者の任侠者は・・・・」
白川「キサマはこれだけ人に迷惑かけていて、まだそんなこと言うてるんか!」

後ろに手を組んで歩きながら

白川「遠山。ここに来てからもう2ヶ月になるやろ?
   誰か、神崎組の奴が一人でも面会に来たか?」
遠山「そ、それは・・・」
白川「そら、そうやろな。神崎の連中もキサマのことで迷惑してるからな。」
遠山「そんなことない!お浜姐さんたちは・・・・」

あわてて口を噤む遠山。

白川「お浜達がどうしたんや!やっぱりアイツらの指示やな?」
遠山「ワシも男や!ワシはワシの意思でしてるねん!」
白川「・・・まぁ、エエ。どうせ、キサマは神崎組から棄てられたんやしなぁ。」
遠山「なんで棄てられなアカンねん!ウソを言うなや!」
白川「そしたら、何で誰もキサマに会いに来んのや?・・・
   イザッというときに駆けつけるのが神埼組の掟なんやろ?・・どや?」
遠山「なんか、特別な理由があるんやろ」
白川「ほぅ-、特別な理由ってなんや?」
遠山「神崎親分もオマエらに撃たれたし・・・」
白川「あんなのカスリ傷や。・・・それともナニか、神崎組は特別な理由があれば
   一番困ってる奴のところには来んでもエエような掟になったんか?」
遠山「い、いや・・・」
白川「そら、見てみいや、神崎組はキサマを棄てた以外にナニがあるんや」
遠山「そ、そんなことない・・・」

白川は看守に合図をして

白川「はよ、今日の風邪の治療に行けや」

白川、不気味な笑いのアップ。

拷問室

平沢、石原が遠山を逆さに吊り上げて、竹刀で叩いている。
気を失うと水の入ったドラム缶に頭から落とす。

平沢「キサマはもう神崎組に裏切られたんじゃ!」
石原「ここでしぬより戦場でしねや!」

遠山に怒鳴りつけながら竹刀で叩き続ける。
しかし、遠山はキズだらけになりながらも目だけは光っている。


再び檻の中(大部屋)
気を失っている遠山を投げ捨てるように掘り込む。
看守が通りすぎると同じ部屋の囚人たちから

じぃ「(声を潜め)遠山はん、大丈夫でっか?」

遠山、倒れたまま動かない。

キタ「遠山はんはここに来てから、エライ酷い目にあってるなぁ・・・」
おばぁ「ワテらも最初は、こんな酷い目にあってたからなぁ」
じぃ「それでも、少しやりすぎやで、ホンマにしんでしまうがな」

介抱する3人。意識を回復しだした遠山。

じぃ「遠山はん!あんさんはワシらの希望なんやし、しっかりしておくれやす!」

気がつく遠山。

おばぁ「遠山はん!」
キタ「金さん!」

まだ、意識が朦朧としてるのか

遠山「わ、ワシ・・棄てられたんやろか?・・・」

顔を見合わせる3人

おばぁ「ナニを言うてるんや。だれも遠山はんを裏切ってないで!しっかりし-や!」
遠山「あっ・・・お浜姐さん・・・」
おばぁ「そ、そうやで!大森姐さんもいるで!」

おばぁがじぃに指を指すが、うろたえるじぃ。
じぃはキタに指を指す。
キタは顔を左右に振るが、じぃはキタの背中を押し、倒れている遠山の横に
連れてくる。
キタは観念して、声色で

キタ「キ、キンちゃん」

その声で安心したように、静かに目を閉じて眠る遠山。

CM

フィクションです!!!


07/22/2001 女任侠伝・別伝9シナリオ
荒ぶる海。
船首には大きな波しぶき。揺れる戦艦。
護送船団の列。駆逐艦、船、船、船、駆逐艦と並んでいる。
船室には多くの兵隊たちが所狭しと詰められている。
船酔いで吐く者、寝てる者、
隅では相変わらず、タバコを咥えている鯉川がサイコロ賭博としている。
時折、裸電球が波に揺られて大きく揺れる。それに合わせて博打の人々の背の影が動く。

鯉川「ほれ、こい!・・・シッピンや。親の総取りやな。」
兵士A「ち、ちくしょう!またかよ!」
兵士B「オマエ、こんな所でツキを使たら、硫黄島ではツキが落ちるで」
鯉川「いらん心配すんなや、ワシはゼニを握ってる間はしなんのんじゃ。」
兵士A「ゼニの亡者やのう」
鯉川「人間はな、執念がある方が長生きするんや。このゼニは硫黄島では使えんやろから
日本に帰ったら、ワシの女房にエエ、ベベでも買ったろかと思うてるねん」
ネガネ「鯉川さん」
鯉川「なんや、丸メガネ、お前もやるんか?」

サイコロを渡そうとする。
メガネはそのサイコロを持った鯉川の手を跳ね除ける。転がるサイコロ。

鯉川「ワレ、何さらすんじゃ!」
メガネ「鯉川さんは、本当に生きて帰れると思ってるんですか!」
鯉川「な、なに言うとるんじゃ、ワレは!」
メガネ「私達が行く硫黄島はアメリカの空母や戦艦に囲まれてるんですよ!
硫黄島に行けるかどうかも分からんのに・・・・」

兵士Aがアタマを指して

兵隊A「お前はここがおかしいのとちゃうか?帝国海軍は世界最強やで。
それに今日の大本営発表かて、このところ、この海域は日本の連戦連勝で
硫黄島には敵はおらんねんど。ノンビリしようや、ニィちゃん」
メガネ「大本営発表なんてアテになりません。事実、私の兄は硫黄島に配属に
なってたんですが・・・・戦しの報告があったんです!」

兵隊A、B、鯉川は顔を見合わす。

鯉川「お前の兄さんはいつ戦ししはったんや?」
メガネ「私が赤紙を貰う前ですから、3ヶ月前です」
鯉川「なんか、事故でも・・・」
メガネ「遺留品はなにも田舎に送られてきてないんですよ。敵がいない安全な場所なら
遺体か遺留品の一つでも帰ってきてもエエのと違いますか?
送られてれてきた箱の中には髪の毛一本もなかったんです・・・・。」

言葉を失う鯉川たち。

鯉川「チッ、白けてしもたワ!今日はもう止めや!」

兵隊ABはあわてて、(勝ち逃げはアカンとか、もっとやらせろという)
サイコロをドンブリに入れ始め、博打を再開する鯉川達。

メガネの隣に納豆屋、世田谷がやってくる。

納豆屋「お、おい、メ、メ・・・メガ・・メガネよ。
い、今の・・は、話、ホ・・ホン・・ホンマなんか?」
世田谷「ワシ、教官から、お前らはデキがエエから安全な所に行かせたると言われたで」
メガネ「私達はお國から真実は知らされていません。・・・特に大本営発表なんか!」

鉄の帽子を深々と被って寝ていたはずの福本が口を開いた。

福本「メガネの言うてることはウソとちゃうで。」

納豆屋、世田谷、メガネが福本の方を見る。鉄の帽子を被り直しながら

福本「ワシ、この船に乗る前に神崎親分から聞かされたんや。今の硫黄島は食べ物も
無くて人肉を食べてるかも知れんということやった」
納豆屋「ヒェ−、じ、じ・・じんにく?」
福本「驚くなや。ここまで来たんや。泣いても喚いてもしゃ−ないやろ。腹を括ろうやないけ」
メガネ「福本さん!よく、そんなこと人に言えるんですね?」
福本「そら、どういうこっちゃ?」
メガネ「私は知ってるんですよ!任侠者の任侠特権を!」
納豆屋「な、なんや・・・それ?」
メガネ「あなた達、任侠者は安全な所しか行かないんでしょ?」
福本「・・・・?」
世田谷「そ、それやったら、やっぱし、硫黄島は安全なんや。」
メガネ「違います!神崎組は官僚から捨てられた任侠者集団なんですよ。」
納豆屋「す・・す、捨てられた?」
メガネ「私も初めは任侠特権があると、そう思って任侠者のあなたに近付いたんですよ。
福本さんと一緒だったら安全だろうし、仲良くしてたら私も安全な所に
配属になると思ったんです。・・・だけど、失敗だった・・」
福本「なんや、お前、最初から計算づくの行動かい、ハイエナみたいな奴やな」
メガネ「ハイエナでもなんでもエエんです。私が代々木の学校で教わったことは
人の成果は自分の物、自分に有利なことしか言ってはならない、
今の時代に生き残れる道は、これしかないとね。」
世田谷「メガネ!オマエは人間の関係を、そんな所でしか見れんのんか?
ワシらは同期の桜やないか!一緒の苦労してきた戦友やないか?」

メガネの胸座を掴む世田谷を止める福本。

メガネ「戦友?何を勘違いしてるんですか?人殺しの集団に同期もクソもあるんですか!」
世田谷「ナニィ!」
福本「止めろ!。メガネの言う通りかもしれん・・・」
世田谷「・・・福本さん。」
福本「ワシは任侠者やし、人を傷付けたこともある。人をころすこともあるんや。
でも・・・人を傷付けたり、一人でもころしたら犯罪や。パクられて
刑務所に入った奴もいる。・・・けど、今度の戦争は人を沢山ころしたら
勲章を貰って、お國では英雄になる。」
メガネ「福本さん・・・」
福本「同じ日本のお國の法律やのに、人をころして勲章の時と犯罪の時と何で変わるんや?」
納豆屋「そ、そら・・・こ、國益に・・あうかどうかと・・ち、ちゃいますか?」
福本「国益の為やったら、人をころしてもエエんか?」
納豆屋「・・・・・」
福本「なんかおかしいやろ?・・・ワシら、お國に騙されてるかもしれんなぁ」

そこにサイコロが飛んできた。

鯉川「なんか、難しそうなこと言うてるなぁ。ワシら博徒はなぁ、騙す、騙されるは
いつものことやねん。ほんでもな、イカサマ博打で、もしそれも見破っても、
ワザと騙されてるフリしてやな、逆にそれを利用して勝つのが一人前の博徒なんや。」

鯉川はサイコロをひらうと、また、兵士達のほうへ戻っていった。

(CM)

フィクションです。笑って許して!

07/22/2001 女任侠伝・別伝8シナリオ
神崎「実は・・オマエ達は知らんやろうけど、任侠特権というのがあってな。」
大森「任侠特権?そ、それって、なんでっか?」
神崎「ワシら、任侠者は常日頃からカタギ衆のため、朝も夜もない生活してるやろ?
だからお國から特別な待遇を受けているんや」
大野「特別な待遇?」
神崎「そや、ワシらが今使うてる表の黒の高級自動車があるやろ、あれは、お國から
貰らってるんや。」
大森「えっ?あの自動車でっか?あれは組の物ではないんでっか?」
神崎「そや、表向きは組の所有物なんやけど、ホンマはお國から預かってるもんや」
お浜「・・・・・」
神崎「これは、任侠特権の一部で、他にも任侠を25年程勤めるとな、
勲章も貰えて、肖像画までお國が描くいて飾ってくれるんや」

一同唖然・・・

神崎「それだけとちゃうねん。任侠を辞めたあともお國からゼニを貰えるんや」
大森「ゼ、ゼニも?なんで・・・そんな・・・」
神崎「ワシも初めはおかしいとは思うてたんやけどな、竹入組長の昔からの慣習やと
いうことで、組長だけに言い聞かされてきたことやねん。」
お浜「ワテらの先輩達も勲章や肖像画を描いてもろたり、任侠を辞めてからもゼニを
貰うてる人はいるんでっか?」
神崎「いるんや。」
お浜「!」
神崎「ゼニなんかは日常的に任侠対策として、お國の機密費の中からゼニを貰うてたんや」
お浜「今もでっか?」
神崎「今は・・・」
大野「そんなゼニは返しなはれ!」
大森「そや、そや、ワテら任侠者がお國からややこしいゼニを貰うてたら、
カタギ衆のために役立つことでも、お國に何も言えんようになりまんがな!」
神崎「わかった、・・・・・そないにするワ」
お浜「それ以外には・・・・?」

神崎はタバコに手をかけて、火を点けた。
煙を大きく吸い、吐き出すと白い煙と共に吐き出すように語りだした。

神崎「徴兵のことやねん」
お浜「徴兵?」
神崎「そや、徴兵や。ワシら任侠者は今度の戦争で危険な外地へは送られへんねや」

一同(えっ?)お互いの顔を見回す。

大森「そしたら、危険な外地にはカタギ衆だけ行かせて、任侠者は安全な内地に・・?」
神崎「男が全部外地に行ったら内地の治安が危険になるということでお國が決めたんや」
大野「お國、お國って、なんですのん?!そんなことで任侠が勤まりまんのんか?」
大森「男の任侠者はお國から鼻クスリも嗅がされて、腰抜けになったんかいや!」
お浜「神崎親分!戦争は誰でも行きたくないんでっせ!だけど、カタギ衆から人気のある
小泉親分がお國側についてるから、小泉はんの意見に反対出来ないだけやおまへんか。」
大森「男任侠は世論が一番恐いんやなぁ・・・だから人気のある方にだけ付く・・」
お浜「でも、人気があるとか世論とか言うてもホンマ物の正義、真理ではないこともあるんでっせ」
大野「人気や世論というたら、同盟国のヒットラ−総裁も同じでんな」
お浜「悪いことは悪い、エエことはエエ。正義や真理は時代が、どんなに変わっても
なんも変わらんこととちゃいまっか?」

神崎の持っていたタバコが根元まで灰になっていて、火が指まで来ていた。
ポロッと落ちるタバコの灰。

神崎「そや、お浜達女任侠者のいう通りや・・・・・」
お浜「それで、さっきの小泉親分の電話はなんですの?」
神崎「・・・福本は任侠特権が外されて、外地へ行く」

大野、大森沈黙。

お浜「任侠者では福本はんだけでっか?」
神崎「そうらしい・・・神崎組が官僚の決めたことに逆らったからやそうや」
大森「それって、金ちゃんのことでっか?」
神崎「そのようやな・・・・そもそも、官僚と任侠者はエエ意味でも悪い意味でも
持ちつ持たれる関係やったんやけど、官僚はそれを壊したと思うたらしい」
お浜「それやったら、この際や!官僚とケンカしまひょか!」
大森「それや、その通りや。ホンマ者の任侠道に戻れるには今、戦わなあかんな!」
大野「そうと決まれば、早速、網走に金ちゃんを助けにいきまひょか!」


(CM)

フィクションです。

07/22/2001 女任侠伝・別伝7シナリオ
熊本錬兵場・教官室
窓から運動場を見ている次官。
運動場で訓練を受けている福本達を見ている。
体力のない丸メガネはぶっ倒れる。蹴る教官。
相変わらず、動作の鈍い大柄の世田谷と小柄な納豆屋は
教官より殴られている。庇う福本、鮎川も殴られている。

次官 「アイツらは、いつからここに来ているのだね?」
鈴木教官「はい、もう2ケ月程になります。」
次官 「次の配属は決まったのかね?」
鈴木教官「ここの錬兵場は本土決戦に備えての新兵の訓練場なので
福岡の部隊に送り込む予定であります。」

後ろに手を組んで歩いていた次官が立ち止まって鈴木に怒鳴る。

次官 「君は今のお國の情勢をなんと心得ているのだ!」
鈴木 「・・・・・?」
次官 「今は外地で塗炭の苦しみの中、敵と戦っている兵士が沢山いるんだぞ!
その兵士達が今の我が大日本帝国を支えているんだ!」
鈴木 「はい!さようでございます!」
次官 「そんなときに、何を呑気なこといっとるんだ!
真っ先にあのような帝国陸軍に逆らうような奴らは、
外地での任務で精神を鍛えなければ、御国の為に役立つ兵士に育たないぞ!」
鈴木 「し、しかし配属については軍の方針・・・・」
次官 「・・・・私がいっとるんだよ!」
鈴木 「はい!わかりました」(敬礼をする)

次官はまた、歩いて窓越しに来る。運動場の福本たちを見るとニヤリと笑った。

(場面は変わって)
信濃町・神崎組事務所
組員達はあわただしく動いている。
電話のベルが鳴る。

大森いち子も忙しいそうに動き回っているが、誰の電話に出ないので仕方なく

大森「はい、神崎事務所です。・・・はい、・・・はい、少々お待ち下さい。」

受話器を手で被せて

大森「組長!小泉親分からです」

神崎、メガネをはずし、書き物の手を止め、電話口までやってくる。

神崎「はい、神崎ですが・・・・えっ?!・・(しばし無言)・・・・」

その声に驚く事務所内の組員達、動きが止まる。
神崎の持った受話器からは微かに小泉の声が漏れてくるが、聞こえない。
電話を切られた音(プ−−−−)が漏れて聞こえる。
力無く受話器を置く神崎。

甲彦「親分、どうされたんでっか?」
神崎「い、いや、なんにも・・・・・」
大森「・・・・?」
神崎「いち子、・・・お浜達を呼んでくれ」
大森「は・・・はい・・・」

神崎組事務所・奥座敷
両手を組んで正座の神崎・無言で目を閉じている。
机を挟んでお浜、大野ユカリ、大森いち子。

大森「えっ?金ちゃんが網走に?!な、なんで今までワタシらに黙ってたんでっか?」
神崎「すまない、これには訳があるんや」
大野「わけ?」
神崎「そや、遠山の徴兵拒否が公になると、日本国中の任侠者がマネして
拒否する者が多く出てくるやろ。そないになったら、カタギ衆から
なんで、任侠者だけが戦争に行かないんや、と騒動になって任侠がカタギ衆から
支持されないということで、小泉組長から相談があってやな、
公にはしなかったんや。」
大野「そやけど、金ちゃんのしたことは悪いこなんでっか?!」
神崎「い、いや・・・そういうことではないんや」
大野「そ、そういうことって・・・・どういうことでっか?」

ユカリが立ち上がり、神崎に詰め寄るのを制するお浜。

お浜「親分さん、ワテら任侠者は、カタギ衆の為に生きてるんやけど、
何も、カタギ衆の人気取りのために任侠道を歩んでいるんやおまへんやろ?」
神崎「・・・・・」
お浜「もし、カタギ衆が間違った方向にいっていたら、諌めるのも任侠道やおまへんか?」
大野「そや、その通りや!」
お浜「今のこんな御時世で、戦争反対を言える勇気のある者は、任侠者しかいてまへんやろ?」

うなずくユカリと大森。

お浜「神崎親分・・・・」

正座のまま神崎ににじり寄るお浜。

お浜「なにか、まだワテらに言えんことおますんやろ?」
神崎「・・・・・・」

神崎、急に目を見開いて語り出した。


(CM)

フィクションです。


07/22/2001 女任侠伝・別伝6シナリオ
村上教官のアップ。
村上教官「前へ−、進め!」

運動場には整列した新兵の集団。
運動場に響き渡る声(第2師団、前へ−進め!)
行軍する新兵達。


山道。疲れた表情の納豆屋、足を引き摺る丸メガネ、葉っぱを咥えてる鯉川、
まだ、涙を出してる世田谷、険しい顔の福本。

鯉川の横の丸メガネに

鯉川 「おい、メガネ。おまえ、足は大丈夫なんか?」
メガネ「・・・・ボクは偏平足なんで、こんなに歩いた事ありませんよ。」
納豆屋「へ、へ、わ、わしの作った納豆食べたら偏平足はな、治るで」

鯉川が納豆屋の頭を小突いいる。

世田谷「鯉川さん、」
鯉川 「なんや?」
世田谷「ワイのゼニ、返してもらえまへんか?」
鯉川 「へっ、ナニ言うとるねん。大の大人が小銭ぐらいで、
まだグズグズ言うてるんか?アホぬかせ!」

世田谷「ワイにとっては大金ですねん。」
鯉川 「ドアホ!オマエかて博打に勝ってたらワシからゼニを取ってたやろが!
ワシが負けて、ゼニ返してくれというたらかえしてくれるんか?
・・・ケッ!ダイガイにせぇや!」

メガネ「それでも鯉川さん、少しくらい返してあげてもいいんではありませんか?」
鯉川 「おい、メガネ!博打打ちにはバクチの掟があるんや、博打して、その負けた
方からゼニを取らなかったら、ワシがこれから博打を打てんように
なるんや。負けたら払う。勝ったら取る。これが男の結果主義や。」

メガネ「そんなものなんですかね。」
鯉川 「チッ、負けるのが恐いんやったら、初めからバクチはするな」
メガネ「私はそんな不合理な搾取はしませんよ」
鯉川 「ヘ、ヘッ、いい訳ばっかり言いやがって!
勝負っちゅ−もんはやな、止めたときが負けなんや。
勝負をやりつづけてる間はまだ途中経過なんや。負けではないんやで。
一回ぐらい負けたぐらいで、勝負を諦めたらアカンで!」

納豆売り「そ、そやな、鯉川はんの言うてる通りや。
ワシも美味しい納豆を何回も作り直して初めてウマイ納豆が出来たんや」
福本 「オオッ!、納豆屋!オマエ、今度は吃らんかったやんけ?」
納豆売り「そうやなぁ。ワシ、緊張したときだけ吃りますねん。」
鯉川 「ホ−ッ、なんや、コイツ、ワシらに緊張せんようになったんやな。」
納豆売り 「そうだすなぁ。みんな仲間やと思うたからですワ」
鯉川 「ヘ−ッ!いつからワシらが納豆屋の仲間になったんや?」
福本 「おいっ、止めろ」
鯉川 「・・・・チッ」

(止まれ−!)

村上教官「本日はここで野営を行う!各自塹壕を掘れ!」

新兵が思い思いのところで穴を掘り始める。
福本たちの穴を掘る。
納豆屋は木の側で納豆売りのときに使うラッパを出して磨いてる。
メガネは軍靴を脱いで偏平足の足を出した。血が出ている。

福本「オイッメガネ、そんな足では穴は掘れんやろから、ワシが掘ったろ」
メガネ「いいんです!」
福本 「・・・・・・」
メガネ「少し休んだら治りますから・・・自分で掘ります。」

納豆売りがラッパを大事に仕舞い立ち上がると、スズメ蜂1匹が納豆売りに
纏わり付く。手で払い除けるが、まだ纏わりつく蜂。
下から鯉川が叫ぶ。

鯉川 「コラッ−、オマエは何をしてるんや?」
納豆売り「い、いや、蜂がね、纏わりつくんです・・・わ。」

まだ、蜂を払うが、上着を脱いで払うとスズメ蜂の巣に当たり、巣が落ちた。
スズメ蜂の大群が納豆屋に襲い掛かる。

ワ−と言いながら逃げる納豆屋。
福本、鯉川たちが異変に気づく。

鯉川「おい、川に飛び込め!」
納豆売り「川ってど・・・どこに・・・あ、あるんでっか!」

蜂の大軍がメガネのところにも来る。
裸足で逃げるメガネ。

鯉川「逃げるな−!蜂は動いてるものに刺すんや。じっとしとけ−!」

その場にうずくまる納豆屋とメガネ。だが蜂は2人を襲ってる。

鯉川「ち、ちくしょう!」

鯉川と世田谷は2人の前を通り過ぎ、蜂の巣を持つと山の奥へ行った。
鯉川を追いかける蜂の大群。世田谷が蜂の大群を自分に引き付けるため大袈裟に暴れる。
納豆屋とメガネを抱えて反対へ逃がす福本。

しばらくして、倒れる世田谷。散り去る蜂の大群。

村上教官「オマエらは何をしとるんだ−!ばかもの!」

納豆屋とメガネを殴り付ける村上教官。鈴木教官は蜂に刺されて倒れてる世田谷を蹴る。

福本たまらず、鈴木教官のところへ行く。

福本「教官殿!止めて下さい!」
鈴木「なんや?またぁオマエか!」
福本「コイツはみんなを救うため、自分が蜂の的になっていたんです!」
鈴木「ばかやろう!蜂と戦ってどうするんや!敵は外地にいるんやど−!」
福本「ですが・・・」

鈴木は問答無用で福本を殴り付け、続いて納豆屋、メガネを殴った。
それで気が済んだのか、他の教官と共に去った。

起き上がる3人。

福本「だ、大丈夫か?」
納豆屋「な、なんとか生きてますわ」
メガネ「私も・・・世田谷さんは?」

3人は倒れてる世田谷の元に行く。

メガネ「大丈夫ですか!」
世田谷「・・・・・・」(反応なし)
顔を見合わす3人。
納豆屋「世田谷はん!」
世田谷「う−−−ん」
ホッとする3人。
起き上がる世田谷。
世田谷「ワシ、皮膚は強いから刺されんかったワ」

(おう−い)

森の向こうから鯉川の声。

鯉川「みんな、大丈夫か?」
メガネ「鯉川さんこそ、大丈夫ですか?」
鯉川「ワシは川に飛び込んだからな、」

鯉川は軍服の中から蜂の巣を出し

鯉川「戦利品や、みんなで食べようや!」

笑う4人。


(CM)

フィクションです。

07/22/2001 女任侠伝・別伝5シナリオ
夏の空。入道雲。
熊本錬兵場の看板。
運動場には上半身裸で掛け声をかけてあってランニングする新兵の集団。
整列している新兵の集団。(敬礼の仕方、整列の仕方を訓練している)

そこにボロバスから降りる大きなリュックを背負った新兵達。
人相が悪いガッチリ肩の者、ビクビクしてる体の小さい者、
丸メガネのおとなしそうな者、大柄だが、ボ−としたしまりのない顔の者、顔のアップ。
その後から降りる福本。

50人程の集団が2列になり、錬兵場に入っていく新兵達。

運動場に並ぶ新兵。前には教官達(鈴木、村上、中川)が整列している。

鈴木教官「貴様たちは本日より、畏れ多くも陛下直轄(教官達、一斉に起立の姿勢)の
帝国軍人に(休めの姿勢に戻る)なったのである。
これからは、帝国軍人としてお國の為、陛下の為(起立)に役に立つ
(休めの姿勢)精神を、ここで修練して戦地に赴くのである。」

(陛下)と言う言葉を使うとき、教官達が一斉に起立の姿勢になるので
新兵達も遅れながらも起立の姿勢や休めの姿勢になるが、何人かはしなかった。
その新兵の前に立つと、

村上教官「キサマ!何をぼんやりしてるんや!畏れ多くも陛下(自分は起立の姿勢)
の御名前が出されたら(休めの姿勢)起立の姿勢をとらんか!ばかもの!」

その新兵は村上に殴り倒されたが、すぐに起き上がって

新兵 「き、教官殿!ワ、わて、な、納豆売りな・・なんで・・よう知りまへんねん」
村上教官「キサマ!まだ、減らず口を叩いてるな!根性を叩き直してやる!」

また殴り倒した。

村上教官「オイッ!納豆屋!帝国軍人の精神が判ったか!」
納豆屋 「へい!わ、・・・わかり・・まし・・た。」
村上教官「へい、ではない!はい!だろうが!」(また、殴り倒す)
納豆屋 「へ、・・・はい!わ・・わかりま・・・・した。」

村上は起立の姿勢を取らなかった者を次々と殴り倒していった。
その中に福本もいた。頬を手で押さえ、ゆっくりと立ち上がる。

村上教官「キサマ!そんな根性で、お國の役にたつと思うのか!」

また、殴りかかったが、今度は福本が避けた。怒り狂う村上。集まる教官達。
竹刀でメッタ打ちされる福本。脅える新兵達。突然の雷雨。見上げる教官。黒い雲。


(場面が変わって宿舎内)
新兵達がそれぞれの与えられた場所に荷物を置いてくつろいでいる。
福本も腫上がった顔を痛そうにしながら、横になってる。そこへ人相の悪い男が
タオルで頭を拭きながら話かけてきた。

悪顔の男 「ニィちゃん、さっきはヒドイ目にあったな。」
福本 「・・・・・」
悪顔の男 「しかし、エエ根性しとったな。教官に刃向かうヤツなんか初めて見たで」
福本 「・・・・・」
悪顔の男 「あっ、すまん、ワシ、飛騨高山からきた鯉川と言うんや、表向きは木こりや
けど、ホンマはな、しがない博打打ちやねん。
内緒の話やけど、ワシ、前にも錬兵場にきた事あるねん。そのときは
醤油をガブガブ飲んで体調不良で帰ったんやけどな。ヒッヒッ。
・・・・・ニィちゃんはカタギではないんやろ?」
福本 「!」
鯉川 「心配せんでもエエがな、ワシは任侠者とちゃうけど、地元の任侠者の
手伝いをしたこともあるんや・・・」

福本暫く様子を窺っていたが、

福本 「ワシは信濃町・神崎組の福本という者や」
鯉川 「そうか!ワシの世話になったオジキも神崎の系統やったワ!
奇遇やな、これからも宜しくな」

それだけ言うとまた、どこかへ行った。
その会話を福本の横で聞いていた丸メガネの青年が

丸メガネ 「福本さん」
福本 「・・・・なんや?」
丸メガネ 「こんな狭いとこやから、横におったら聞こえてしまって・・・
すみません。私の名前は・・・訳があって匿名希望なんですが・・
丸メガネをしてますのでメガネとでも呼んでください。
さっきのあの男なんですが、気をつけたほうがエエですよ。
ここに来るまで、さんざん博打でゼニを撒きあげてましたからね。」

メガネが顎を突き出した方を見ると大柄だが、しまりのない顔の男(世田谷)が
ワンワンと泣いていた。

丸メガネ 「あの男、世田谷というヤツでして、ボクは代々木から来たんですが、
ずっと東京駅から同じだったもんで・・なんか鍛冶屋やってたらしいです
かわいそうに、有り金やられたんでしょうね。」
福本 「・・・・」

納豆売り 「痛てててて、まだ、頭がふらつきますワ、す、すんま・・・へん。
こ、・・この横、あ・・・開いて・・まっか?」

福本は横の荷物を整理して開けてやると、

納豆売り 「す、す・・すんまへんなぁ。ワシ、・・み・み・・水戸の納豆屋
ですねん。わ・・・わて、き・・・緊張すると、ち、ちょっと、吃りまんねん」

小柄で童顔の納豆売りが、人懐っこい顔で笑うと前歯が無かった。

宿舎の扉が突然開くと、教官たちがドカドカとやってきて集合をかけた。

(起立!)

村上教官 「今から阿蘇山へ行軍に出掛ける。ここの森林に迷ったら
一生出てこれないと思え。10分後に集合!以上!」

(敬礼!)

宿舎を出る教官達。
困惑する福本、鯉川、メガネ、納豆屋、まだ泣いている世田谷。

(CM)

フィクションですよ。

07/22/2001 女任侠伝・別伝4シナリオ
東京駅・昼・晴天
プラットホ一ムに蒸気機関車が横付けてある。
時折短い汽笛が鳴る。
ホ一ムには召集された兵隊達でごった返っていた。
あちらこちらに出兵兵士の名前が書いた大きな登りが立ててある。
世話役のヒゲの袴姿の男が何かをしゃべっている。

ヒゲの袴男「それでは、増田君の武運を祈って、万歳三唱をいたします。ばんざ一い!」

ヒゲの袴男の隣にはモンペ姿の母親、妹たちが泣いている。
増田を取り囲む全員が万歳をしているので、しかたなく万歳をさせられる。
(ばんざ一い、ばんざ一い)
あちこちの取り囲みからも万歳が聞こえてくる。

万歳の人ごみをかき分ける女がいた。
防空頭巾を取るとお下げ髪を三つ編みにした、かなえの顔が見えた。
かなえは人ごみにとまどいながら、誰かを探している。
神崎、甲彦、福本寝一郎を見つけると

かなえ「親分さん!」
神崎 「おっ、かなえやないか?オマエ、どないしたんや?
    ひょっとしてこいつの見送りか?」

神崎の隣で照れてる福本寝一郎が頭を掻いていた。

かなえ「いややわ。親分さん。肝心なときにいつも寝坊してるような人なんか
    どうでもエエんよ。・・・・そんなことより遠山はんはどないしたはります?
    最近、お見かけしまへんさかい、ひょっとして召集がかかったと思うて
    来てみたんどす。」
神崎 「金公か、金公は・・・」
甲彦 「遠山やったら・・・・」
神崎 「甲彦お、オマエ・・・か、かなえ・・・ち、ちょっと待っとき、・・」

神崎はあわてて甲彦の口を両手で塞ぎ、ホ一ムの隅につれていくと
軽く甲彦のアタマを叩いた。

神崎 「あんな、遠山のことは黙っとかな、あかんねんど!」
甲彦 「な、なんでだす?お浜姐さんや大森姐さんは知ってますんやろ?」
神崎 「お浜は遠山が特高に連行されたことは知ってるけど、網走に連れて行かれたこと
    は、お浜も知らんねん。今は取調べ中や、ということにして他の女御衆には
    だまってもろてるねん。事が事だけに皆が動揺したらアカンしなと言うてな。」
甲彦 「なんでだす?」
神崎 「そら、遠山のしたことはワシら任侠者の手本になるけど、今は見てみ。
    こんなご時世や。ワシらが小泉組と折角、仲良くやってるのに
    遠山が網走に連れていかれた事が女任侠に判ってみ、アイツらだけで官僚や
    小泉組に殴り込みにいきよるで。そしたら、ワシの努力も台無しやろ?」
甲彦 「まぁ、そう言われたらそうですな。女任侠者は潔癖やさかいに・・・」

神崎と甲彦を怪訝そうに見ているかなえに気づく2人。2人に近づくかなえ。

神崎 「あ一、オッホン、そ、そういえば、甲彦、オマエも年頃やし
    戦地に行くまでに見合いでもせ一へんか?」(ワザとらしく)
甲彦 「ほ、ホンマだすか?ワシ嬉しいワ!」
神崎 「あ一、そうか。か、かなえ、おまえは甲彦のことどない思う?」
かなえ「はぁ?」
神崎 「こう見えても甲彦は将来有望の任侠者やし・・・」
かなえ「親分さん!ふざけてるんですか?」
神崎 「い、いやそうゆうことではないんだが・・・」
かなえ「甲彦はんって、どこの神輿でも平気で担げる中途半端な任侠じゃありませんか、
    なんで、そないな人のことなんか・・・・
    そんなことより遠山さんはどないしはりましたんや?
    お願いですから、ホンマのことを教えてください!」
神崎 「・・・・」
甲彦 「・・・・」

ここでお浜と大森いち子が登場。

お浜 「これ、甲彦、早よせな福本が乗り遅れるやろ?はよ準備したりや」
大森 「かなえ、おまえは何でここにいるんや?」
かなえ「へぇ、遠山さんがひょっとして召集されたかと思うて・・・」
お浜 「かなえ。心配せんでエエで。」
かなえ「・・・・・」
神崎 「おい、かなえ、この荷物を福本に渡したってくれ」

ふくれっ面で荷物を引きづりながら持つが、力がはいらない。

甲彦 「かなえ、ワシが持ったろ、貸してみ」
かなえ「ほっといてください!」
甲彦 「・・・・・」

かなえはデッキで待ってる福本に荷物を渡した。
福本は大きなリュックを担ぎながら荷物を受け取る。
遅れて神崎、お浜達がかなえの後ろに来た。

かなえ「福本はん、」
福本 「な、なんや?」
かなえ「福本はんにひとつ、聞いてエエですか?」
福本 「・・・突然なんや?・・・エエで。何でも言うてみ」

神崎と甲彦は顔を見合わせ、不安な顔をしながら、かなえの言葉を待った。
お浜と大森も固唾を呑んでかなえの言葉を待っている。

かなえ「・・・・男はんって何のために戦争に行くんですか?」
福本 「そ、そら、お国のためやんけ。」
かなえ「ホンマにそう思うてはるんですか?」
福本 「ワシらは任侠者や、そやからカタギ衆のために戦うのは当然やろ?」
かなえ「そんなん、ウソです!」
福本 「な、なんやて?」
神崎 「こ、これ、かなえ!何ちゅうこと言いだすんや!
    福本はこれから戦場に行くんやで。土壇場で男がウソを言うかい!」

かなえは神崎の言葉にも振り向きもせず、続けた。
それを見守るお浜と大森。

かなえ「ホンマ者の任侠って、そんな単純なもんなんですか?」
福本 「そら、どういうこっちゃ!」
かなえ「福本さんが命を賭けるのは、戦争に行くこととちゃうと思いますねん!
    アメリカ兵をころしに行くことが、何でカタギ衆の為になるんですか?
    戦場に行って福本さんもしぬかもしれまへんねんで!」
福本 「ワシ、しぬことは怖くないで」
かなえ「そんなのは、ホンマの勇気とちゃう!」
福本 「・・・・?」

今にも泣き出しそうなかなえ。それを見つめる神崎達。

お浜 「かなえちゃん、もうそれ以上は・・・」
かなえ「姐さん、私に言わせて!本当の勇気はどんな時代でも、アカンことはアカンと
    ちゃんと言えることやと教えてくれたのは福本はんですよ!
    戦争は・・・戦争で悲しむ庶民は日本人だけやおまへんやろ?
    福本はんにころされるアメリカ人にも悲しむ人、おりますやろ・・・」
福本 「(唖然とする)・・・・」

全部言い終わると泣き崩れるかなえ。背中から抱きかかえるお浜と大森。
バツが悪い神崎と甲彦。

発車のベルが鳴る。
泣き声のような甲高い汽笛が精一杯、その音を伸ばして、汽車はゆっくり動き出す。

デッキから身を乗り出す福本。
両手で泣き顔を隠し嗚咽しているかなえ。同じく嗚咽しているお浜、大森。

その隣でヒゲの袴男が狂ったような目で「万歳」を叫び続けていた。
ばんざい、ばんざい・・・・

遠くに行き去る汽車。
黒い煙。小さくなる福本の姿。

(CM)
フィクションです。


07/22/2001 女任侠伝・別伝3シナリオ
特高取調室
薄暗い部屋の中央に炎が燃えさかるドラム官。
それを囲む亀井、白川、竹刀を持つ平沢、石原の特高達。
傍には数々の拷問道具が設置してある。(ムチ、チェ−ン、滑車)
両腕を後ろ手に縛られ、石の板に正座で座らされている遠山。

(遠山の髪の毛を掴み、顔を上げさせて)

亀井「オイッ!遠山!キサマは何で昨日までに熊本練兵場に集まらなかったんや?」
白川「臆病風邪に感染したんか!」

(竹刀で背中を何度も叩きながら)

平沢「キサマ!なんとか言わんか!」

(グッタリする遠山にバケツの水を掛ける白川)

亀井「オイッ、ホンマは臆病風邪でなくて、神崎組の指示なんやろ?」

(顔が腫れ上がっているのでしゃべれない遠山がアタマを横に振る。目だけが輝いてる)

白川「うそを言うな!そしたら、どうしてキサマは神崎組事務所にいたんだ!あ-?」
亀井「キサマは根性が曲がってるのか臆病風邪に感染してるのか、実験をしたろか?」

(白川は炎の上がるドラム官から赤々と焼けた刻印を遠山に近づけた)
(刻印がジッジッという音がしてる)
(近づく赤々と焼けた刻印を見つめる遠藤。だが、その顔には恐れがない)

亀井「もう一度だけ聞いてやるが、神崎組長の指図なんやろ?」
遠藤「・・・・(首を振る)」
白川「コイツ・・・相当深刻な風邪をひいてるらしいなぁ・・・」

(白川は亀井の顔を見る。亀井はうなづく。意を決した白川が刻印を遠藤の顔に
 押そうとした、その瞬間、取調室のドアが突然開く。驚く亀井、白川)

亀井「じ、次官!どうされたんでっか?」
次官「亀井君、お役目ご苦労さん。」
白川「次官のような方が、こんな所に来られるとはどうしたんでっか?」
次官「白川君。キミは任務に忠実すぎて、やりすぎないようにな」
白川「・・・・」(刻印を元に戻し、うろたえる)
次官「イヤイヤ、キミ達のことは大変よくやってくれてるから評価してるんだよ
   ただ・・・」
亀井「・・・?」
白川「・・・?」
次官「キミ達も知っての通り、神崎組は恐れ多くも陛下直轄(全員背筋を伸ばす)の
   小泉組(背筋を戻す)と連立しとるんだよ。・・・・まぁ、ここはワシに
   任せておいてくれ給え」
白川し、しかし・・・」
次官「ワタシが任せろと言ってるんだよ!」
白川「はい!」
次官「なにも心配しなくてもいいよ。遠山の開放はせん。網走送りにする。」
亀井「網走?」
次官「そう、網走刑務所だ」
亀井「ふっふっふっ、そう言うことだすか!分かりました。次官殿。」
次官「ワシら官僚に逆らうとどうなるのか、神崎にも小泉にも分からす必要があるしな」

(カメラは炎の上がるドラム官越しに次官、亀井、白川の3人を捕らえる。)
(フォ−カスを除々にドラム官の炎に合わす。)

(燃え盛る怪しい炎)


(CM)

フィクションでっせ。

07/22/2001 女任侠伝・別伝2シナリオ
場面は東京・信濃町・神埼組事務所
外は雨の夜。
10坪程の部屋の隅の机に神崎とお浜、大森が座ってる。
その側で若い衆・遠山が控えている。
部屋の片隅のラジオから「りんごの歌」が微かに聞こえてる。

神崎「それで、網走はどやったんや?」
お浜「へぇ、それは酷いものでした。食べ物も満足に与えられていないようで・・・」
大森「あの人たちは、なんも罪もないんですよ、ただ、以前に戦争反対しただけやのに
   アイツらは病気やから戦争反対と言うたんや、そんな臆病風邪の病気者は
   臆病風邪が国全体に移るとアカンから隔離するんや、と・・・。
   長い人で50年も牢屋に入れられてるんですよ!」
お浜「本当にあの人たちは人間扱いされていませんでした・・・」
神崎「この臆病風邪という病気はホンマは人には感染しないんやな?」
お浜「そうなんです。軍部が勝手に作った病気であって、戦争反対の声を閉じ込める
   政策が以前からあったからです。」
大森「実際にはない臆病風邪なんて病気で、人を牢屋に入れておくのは、
   どうかしてますよ。」
神崎「うむ・・・」

突然、ラジオから軍歌が大きく流れ出す。

ラジオ「大本営発表。本日未明、帝国海軍はガナルカタル島沖、100キロで
    米英の船団と交戦し、敵の駆逐艦3隻を大破せしめる。我が帝国海軍は・・・」
神崎「おい、遠山、ラジオを消せ」

雑音とともにラジオの声が止まり、静寂が続く。

お浜「こんなご時世になる前から、戦争反対と言うてた人は本当にエライわね。」
大森「そうでんなぁ。そんな勇気ある人を軍部は病気やと偽って隔離するなんて
   ホンマに日本のエライさんはどうかしてまっせ。」
お浜「せめて隔離された人たちに、人間らしい待遇をさせてあげたいと思いまへんか?」
神崎「そら、任侠者としては放っとかれへんワな」

神崎は湯呑みが空になってるのを遠山に注意する仕草。

遠山「実は・・・ワテ、・・この間、赤紙が来ましてん。」
一同「え、えっ」
遠藤「ホンマは昨日には熊本に行かなアカンとありました・・・・。
   けど、ワテ、牢屋に入って非国民やとか、臆病風邪が感染したと言われても
   戦争にはいきまへん。」
神崎「おまえ、なんで今までそないな大事なことワシらに言わんかったんや?」
遠山「へぇ、姐さん方の網走に行ってきた視察の話、そう、臆病風邪の人たちの
   勇気ある話を聞いてからワテの考えも変わりましてん。」
お浜「金ちゃん・・・」
遠山「ワテ、その網走の人たちに負けんように正義を叫びますワ!」
大森「金ちゃん、あんた、それがどんな過酷なことか知ってるんか?
   ワテらはこの目の前でその悲惨な光景を・・・」

大森の話を遮るように

お浜「金ちゃん、勇気と蛮勇は違うのよ、判ってる?」
遠山「へぃ、どうせワテ、戦争に行ったら、いつ鉄砲の弾に当たってしぬんかと
   怯えながら生きて、ほんで、自分が生きる為に人を殺して
   生き延びるんはイヤですねん。
   喩え、戦争に行かんことで、牢屋に入れられ、過酷な拷問があったかて
   網走の人と同じく、正義を叫んで生き抜きたいですねん。」

大森は大きな声を上げて泣いている。神崎も嗚咽する。お浜は声にならない声を絞って

お浜「金ちゃん、アンタ・・・。」
神崎「オイッ、金公、オマエ、人から臆病風邪やと罵られながらしぬかもしれんねんぞ
   それでもエエんか?」
遠山「へぇ!どんな時代でも正義は一つだす。軍部の思想統制でも真の正義は
   変えることは出来ません。親分、ワテ、任侠者として生きてる限り、叫びますワ!
   勇気ある先人者たちに負けんように」

突然、神崎組の引き戸がドンドンと叩く音。
涙を拭きながら

大森「へぃ、・・グス・・・只今・・」

引き戸を開けると特高の亀井、白川、平沢、石原が立っていた。

亀井「ここは神崎組だな?」
大森 「へぇ・・・」
白川「ここに遠山金彦がいてるやろが!」

亀井が目配せして白川たちを中に入れようとする。

大森「アンタら、勝手に入らんとってなぁ・・」

遮る大森を突き飛ばし、中にはいる平沢と石原

平沢「オマエが遠山だな?」
石原「おとなしくしろ!」

長刀を取り抜こうとする神崎に白川が拳銃を撃つ。
弾が足に当たってうずくまる神崎をかばう遠山。

遠山「親分!」

足から血が吹き出てるのを手で抑えてた遠藤が、亀井に向かって
この野郎!と殴りかかるが、たちまち白川たち特高に殴られ倒れる。
倒れた遠山のアタマを軍靴で踏みつけながら

亀井「オイッ!キサマ−!臆病風邪がうつったんか!」

亀井が合図をすると白川が軍刀を抜き、遠山の左耳を削いだ。

亀井「臆病風邪のものでも、陛下(特高全員、足を揃え、背筋を伸ばす)の
    (足を崩す)兵士になるんやから、銃を撃つためには指は切られへんワな」

平沢が遠山のアタマの毛を鷲掴みして顔を起こすと、外に引きずり出し、
雨の中また、遠山の顔を殴りつけた。

亀井「オイッ、もうそのへんにしとけ。此処でしんでもアカンからな」
白川「そやな、死ぬんやったら戦場でしねや」

遠山を起こすと連行した。遠山の倒れていた水溜りには赤い血が浮いていた。

白川「オイ!神崎!あんまり任侠者やからというて、イチビルなよ!」

特高たちが土砂降りの雨の中、車に乗せて連れて行った。

つづく・・・


フィクションです。

07/22/2001 女任侠伝・別伝1シナリオ
(風景)(バックミュ−ジックに津軽三味線の音色)
吹雪舞う山奥
蓑を被った2人が、風に吹き飛ばされそうになりながら雪道を歩く。
だんだんと2人の顔がアップになる。

お浜の吹雪を裂くような毅然たる顔のアップ。
大森いち子の険しい顔のアップ。
目の前にそびえ立つ木の大きな門
その門の看板「網走刑務所」のアップ。

(ナレ−ション)
お浜と大森いち子がそこに立ったのは昨年の冬のことでございました。
この網走刑務所には無実の罪で50年に渡り、世間より隔離された
人々が収容されていたのでございます。

(2人は固く閉ざされた門を叩きながら)

お浜「こんばんは!開けてください」
大森「誰か、誰かいませんか−」

(門の軋む音と共に開く大きな門)
(開いた門から光りが漏れてきて、その上からバックタイトル)

「女任侠伝・別伝」(テ−マ音楽)

(官史に刑務所内を案内される2人)
(古い牢屋には窓から雪が入ってきている、薄い毛布に包まり、震える囚人たち、
隣の牢屋では頬が削げた口から白い息を出す囚人、官史に懐中電灯を当てられると
まぶしそうに両手で光りを遮る囚人、脅える囚人、奇声を上げる囚人)

(腐りかけた廊下にはネズミの死体、それを蹴ると牢屋に入る、そのネズミを食べようと
我先に奪い合う囚人たち、怒鳴る官史、集まる官史、牢屋を開け、警棒で囚人たちを
メッタ打ちして治める官史の鬼のような形相のアップ、立ちすくむお浜と大森)



(場面は変わり、刑務所内の所長の部屋、スト−ブから湯気の出ているやかん)

所長「いや−、まったくこんな所まで、よくお出で下されましたなぁ。」
無言の2人「・・・・・・」
所長「さぁ、どうぞ」

(ソファ−に座るように勧める所長)
(応じない2人を背にして、お茶を入れ始める)

所長「ところで、今日はどんなご用件ですかな?」
お浜「所長さん、ここの環境は悪すぎます。改善を・・・」
所長「いや。まったくですな。」
お浜「・・・・」
所長「ワタクシもね、このままじゃ、イカンと思てるんですよ。
だけどもね−、なんせ、お國からの予算が無いもので困ってるところですワ。」

(不適な笑いを浮かべ、出来たお茶を2人に出しながら)

所長「ワタク共は、日々鋭意努力して、お國のため、陛下の為に 凶悪な囚人共を
隔離しとりますねん。」

(「陛下の為」というとき両足を揃え、背筋を伸ばす所長。)

大森「だけども、所長はん、ここには、ほとんどの人が、戦争反対の罪状で
入ってる人ばかりやおまへんか?」

(お茶を呑んでた湯飲みが一瞬、止まり)

所長「ヘタなこと言うたらあきまへんで。なんぼ小泉組長の紹介やからと言うても
お國の決め事に意見いわはると、ワシもほっとけへんさかいにな、大森はん。」

(それでも身を乗り出して何か言おうとする大森を制するお浜)

お浜「今日のところは、これで帰らせていただきますけど・・・
所長はん、あんさんたち官史はんだけが太ってるのも困りものですわね。」

(お茶を呑んでいた所長がむせんで、口の中の茶を零しそうになる)

お浜「ほな、帰えろうか、いち子はん」
所長「ちょ、ちょっと待ってください。今から料亭で食事でも・・・」
お浜「結構です。」

(建物の外・まだ、雪が吹いている。黒塗りの高級国産車が止まっている。あわてて所長が、お浜たちを追いかけて表にでると、汗を拭きながら)

所長「お浜はん、ワシを困らさせんといて−なぁ。親分から言われてますんや
神崎組の女親分衆には塩梅しとけとね。ヒッヒッヒッ」
大森「お國からの予算がないわりには、エエ高級車があるんですな。」

(大森の言葉に所長は笑い顔が消える)

お浜「はな、さいなら、所長はん」
大森「(睨みながら)・・・・・」
所長「・・・・チッ、女は何も判ってないワ」
大森「何か言わはった?」
所長「い、いや、何も・・・」

(網走刑務所の門を出る2人、所長室の窓から見ているメガネの男ともう一人の男)

所長室
(帽子を机に投げ捨てる所長)
メガネの男「どないしたんや?」
所長 「ヒッ、あ−、あんたか、ビックリさせなや」
メガネの男「今来てたのは、神崎とこのお浜と大森やな」
所長 「そうやねん。なんも融通が利かんヤツらやで」

(ドアが開く)
所長「あっ、次官殿」

(すばやく敬礼)

次官「アイツらは何か言うてたか?」
所長「はい、囚人の待遇が悪いとか、食べ物は良くせいとかばっかり言うてますた」
次官「ふふふっ、ワシらの怖さを教えたる」

(不気味に笑う2人の男につられて所長も笑いだす)

つづく・・・・


フィィクションです。

07/22/2001 森組任侠伝(女組登場!)10
「おい!おばぁ、ちょ、ちょっと、待ったり−なぁ。ハァハァ」
「ナニ言うてるんや!右ェ門はん!ワテは、あばぁとちゃう、おちょうという名前が
あるんや!まったく、ハァハァ、何回言うたらわかるんや!ハァハァ」
「おば・・違った、おちょう!もうどれぐらい走ってるんやろか?ハァハァ」
「どれくらい・・・そ、そんなの・・・ハァハァ・・・分からんワ!アホ!」
「ア、アホはないやろ?ハァハァ・・・まだ永田町までは遠いんかなぁ・・ハァハァ」

着物の裾を腰まで上げて走る右ェ門と草履を帯に挟んで大股で走るおちょうは
紀尾井町のお堀端まで走って、止まった。
「ハァハァ、お、お浜はんが・・・ハァハァ・・・ウング・・・ワシらを呼んでるのは
なんでやろ?ハァハァ」
乾く唇を、出ない唾で濡らしながら右ェ門が言った。

「フ−ッ、ハァハァ、アンタも鈍いなぁ」空を見上げながら、大きな息で
「右ェ門はんとワテの出番は・・・ハァハァ・・理論戦しかないやろ、
どうせ、アンタの細腕ではケンカが出来る訳ないしな。」
胸をドンドンと叩きながら、息を飲み込むおちょうが言った。

「これでも・・・ハァハァ・・・昔は・・少しやれたんやで、ハァハァ」
「こんなぐらい走って息を切らせてるんでは、ケンカは無理やで」
フ−と深呼吸をして元に戻ったおちょうが言うと橋の欄干に凭れて上を見た。
「あっ!あんなところに大きな向日葵が咲いてるワ!」
「おば、ちがった、おちょうは余裕あるなぁ、ハァハァ」
「同じシンドイ思いするんやったら、景色でも楽しまなあかんで」
「フ−、ワシもようやく息が直ったワ。あれ?あんな石垣の途中にも向日葵が咲いてるワ」
「茎が曲がってる所なんか、アンタの根性と同んなじやな」とゲラゲラ笑ったが、
おちょうが続けて言った。
「ほんでも、あの曲った向日葵はカッコエエなぁ」
「な、なんやオマエ!ワシを誉めてるんか貶してるんか、どっちや?」
「そこの感性が、男どもは鈍いんやなぁ」と言うと
「さ−、ほら、早く走ろうなぁ−」とおちょうは右ェ門の尻を叩いた。



石垣の上の大きな向日葵は、走っていく2人に手を振るように大きく揺れながら、
大きな花びらを風に吹かせて2人の下に飛ばせた。
それはあたかも2人を激励しているように・・・・。


つづく

07/22/2001 森組任侠伝(女組登場!)9
大広間に入ってきた谷友は、左側に座っている神崎組の女任侠の面々に
歪んだ目で見まわしながら、中央の奥へと進んだ。
目の前を通り過ぎる谷友を、背筋を伸ばして睨み返すお浜達だが、
谷友がまだ、S員であると勘違いしている神崎組の男衆は、野中の連れてきたこの男を
安堵の表情で見守っていた。

森組長たちのいる大広間中央の雛壇から、3畳ほど手前でひれ伏す谷友に、森サメ蔵は
労いの言葉とともに身分を明かすように告げた。

「へいっ、ワテは古くからのS会・カタギ衆であり、よろず相談を生業にしている
谷友と申しやす。S会の裏の裏まで知っとりますさかい、何でも聞いておくれやす。」
と言うと、上げていた頭をまた、畳の上に擦り付けた。

野中が今回の三味線引きの所業のことについて尋ねると、
「へいっ、この件はS会の幹部からも相談を持ち掛けられました。事実は丙骨氏の
書いている通りで御座います。」
その谷友の言葉に唖然とする神崎組の男衆は口々に
「そ、そんな・・・ナニを言いだすんや!」と漏らすのが精一杯であった。

そんな男衆を尻目に大森いち子は、ドスの利いた声を張り上げて
「この男はウソツキでっさかい、信用したらあきまへんで!」と叫ぶと
その言葉に連られるように、女任侠たち全員が口々に谷友に正義の声を浴びせた。
その様子に野中は太鼓を打つように命じ、「ドン」という音が響くと
立ち上がっていた女任侠たちは、腹立たしさを隠しきれずに、不承ながら膝を直し座った。

それを見た野中は少しニヤリとしたが、すぐに元の強持ての顔に戻し、
「もう少し、詳しく申してみよ。」と顎をシャクリながら言った。
「へいっ、S会は大岩寺のご僧侶に対して、いつも悪口を申しておりました。
やれ、僧侶は庶民の痛みは分かってないとか、いつも偉そうにしてるとか言って、
素直にご僧侶の話を聞こうともしませんでした。そんななか、S会の三味線引きは
手柄を立てようとして、ご僧侶を事故に見せ掛けて溺れさせたのです。
また、これはS会の幹部の東口らが、ワテに大岩寺との離脱の計画を練るように
指示を受けましたさかい、ワテはS会が恐くて逆らえず、事故に見せ掛けた殺人を
企てたのです。うっうっ・・」
急に泣きまねをする谷友は、手でドス黒い頬を隠しながら笑っていた。

これを聞いたお浜は座布団から足をはみ出し、ニジリ寄りながら
「野中親分!私たちにも証人を出させてください!」と絶叫にも似た声を発すると
「これ以上の証人は何処におるんじゃい!」と亀井が凄んだが、すぐにお浜が
「もし、私たちに証人を出せて戴けるのどしたら、今迄の森組と女組の揉め事のことは
ワテが責任を取って、ケジメを着けさせてもらいやす。」と言うや否や
脇差しを取り出したと思うと、バンと畳にドスを突き立て、その横に
自分の白い子指を差し出し、ドスを斜めに降ろした。
「お浜はん、あきまへんっ!」との声と同時に
横にいた大森が、そのお浜の白い指の上に自分の左手を置いた。ブシュ!
鈍い音と共に大森の手の甲から、血しぶきが大広間に広がった。

「大森姐さん!」
お浜が困惑したような顔で大森を見つめると、大森は
「お浜はん、アンタはもっと別なところでケジメを着けなあかん人やよってにな。」
大森はそういうと、お浜のドスを取り上げ、谷友の方に投げた。
谷友は、その正義の血が付いたドスに腰を抜かして、背中から倒れるようにして逃げた。

切り口が開いた左腕を袂で隠した。だが、すぐにその着物の袂からも血が滲んできたが、
大森は何事も無かったように立ち上がり、
「親分衆の皆はん、粗相をお許しください」言って礼をすると、大広間を出ていった。
駆け寄る松に大森は
「今のうちに右ェ門はんとおちょうはんを呼んどいで」と耳打ちした。
この壮絶な女任侠の根性に押されたのか、森サメ蔵は休憩を告げる太鼓を打たせた。


つづく・・・



07/22/2001 森組任侠伝(女組登場!)8補足 By-大森礼子@議員
> 大森の向かいに座っていたのは、前歯のない口を開けて薄ら笑いを浮かべている平沢であった。
> そんな平沢を睨み付けると、右横にいた亀井が平沢に耳打ちをしながら、斜めに
> 大森を見ると「クックックッ」と喉を震わせ、笑った。

そのあまりの卑猥さに、大森いちこは語気鋭く一喝した。
「こらぁ! どん亀ェ! むさくるしい顔、見せんとけ! 気分悪うなるやないか!
 (ゲブッ、オエーー) ほんま、迷惑なやっちゃで。
 こんなとこへおらんと、竜宮城へでも行って遊んでこい。」

(あっ、京都のおいちゃん、ごめん。反射的に書いちゃった。 ま、国会議員もこれくらいの冗談いえないとね。)


07/22/2001 森組任侠伝(女組登場!)8
永田町の森組事務所は、大通りに面した造り酒屋の屋敷を建て替えたものであり、
20間はあろうかと思われる間口の真ん中に大きな門があった。
その門の横には「日の丸」の旗が、力なく垂れ下がっていた。

この森組事務者の中央玄関には、次々と黒漆喰の高級人力車が到着しては
腹の出た任侠者を降ろしていった。

高級人力車が大通りに列をなしている側を、お浜達女任侠の集団が道狭しとばかりに
大挙して現れた。その壮観さに、通り沿いの各店々の丁稚達の帚を持つ手が止まり、
また、道行く人々は口をポカンと開けて立ち止まって、女任侠達が通り過ぎるのを
見守っていた。

お浜達が森組の門まで来ると、先に来ていた甲彦が屋敷の中に案内した。
中に入ると、100畳程の大広間の真ん中を大きく開けるようにして左右に分かれ、
森組幹部と神崎組幹部が一人一人、向き合って並んでいた。
大広間の奥は、タタミ一畳分だけ高く造られていて、その雛壇の中央には
森サメ蔵と神崎が皆を見渡すように座っていた。

お浜たち女任侠者は、雛壇に向かって左側、神崎組幹部の10番目から順次並んで座った。
大森いち子も指定された座布団に座り、森組の任侠者と向き合うと「はっ」とした。

大森の向かいに座っていたのは、前歯のない口を開けて薄ら笑いを浮かべている平沢であった。
そんな平沢を睨み付けると、右横にいた亀井が平沢に耳打ちをしながら、斜めに
大森を見ると「クックックッ」と喉を震わせ、笑った。



暫くして、開会の太鼓の合図があると、一同は一斉に静寂に戻り皆、襟を正した。
時折聞こえる咳払いも大広間に響くほどのなか、太って首のない森サメ蔵は話し出した。

「今日、集まってもらったのは他でもない。皆も十分、存知のことだとは
 思うが、我々森組と神崎組の任侠大連合のことである。いささか、過去の経緯が
 あるものの、お互いの組同士は日本の任侠界、カタギ衆のために仲良くしなければ  
 ならない。然るに、昨今、困ったことに、双方で揉め事も起きているようなので
 それについて皆の忌憚のない意見を聞きたいと思う。」

森サメ蔵が紙を見ながら、決められた文句をひと通り言い終えると、東北から出てきた
森組の白川が手を挙げた。
「最近、神崎組の護っているカタギ衆のS会の人間が強盗や殺人をしてるんや。
 その点、神崎組はどういうケジメを着けているんやか、聞きたいねん。」
この発言に森組の任侠者が一斉に「そうだ、そうだ、」「ワシとこも困ってるんや!」
「ちゃんと、せなアカンど!」などのヤジが飛んだ。

徐に神崎組・冬柴若頭は両手を挙げて、そのヤジを制すると
「白川はん、そんな根も葉もないこと言うてくれたら困りまんがな。
 証拠でもあるんでっか?」
白川は立ち上がり着物の胸元から一枚のかわら版を取り出し見せた。
「この黒旗という、かわら版にちゃんと書いてまっせ!冬柴はん!」
「そんな3流かわら版に書いてあることが事実なんでっか?」と冬柴は言い返したが、
「この黒旗の責任者の丙骨氏によると、S会の西大阪の三味線引きの北という男が
 大岩寺系の浄尿寺の僧侶を川に落として溺れさせて殺した、とあるんやで!」

また、一斉に森組から非難にヤジが怒号のように暫く続いたが、
「それは、違います!」
意を決した大野ユカリは、毅然と立ち上がると続けた。
「それは事実ではありまへん!私はこの件で、大阪の警察へ行きましたけど、
 実際は、夜の盛り場の川床で三味線を引いていた北さんに、背後からこの僧侶が
 酔っ払ってぶつかってきて、誤って川に落ちた、との調べがついてまっせ!
 三味線引きの北はんには、なんの落ち度もありまへんで!ボンさんが勝手に北はんに
 ぶつかって起きた事故でんがな!これはそこに居た人の全員の証言ですワ!」

白い顔を紅潮させて、一気に話したユカリは警察調書を差し出した。
「それでも、坊さんが溺れて死んだんは間違いないやろが!」
「その証人は全部S会にヤツらとちゃうか?」
心無いヤジがユカリの心に痛かったが、こんな冤罪を許してなるものか!との気迫で
話した。
「この黒旗の丙骨は元S会のはみ出し者で、純真なカタギ衆に迷惑ばっかりかけてた
 男なんどす。それを恨みに思って、このようなウソを書くヤツなんです!」

この言葉に大広間は蜂の巣を突ついたような騒ぎとなったが、
太鼓の合図でまた、静まった。

ここで森組の後見人でもあり、今回の任侠大連立の立役者の野中が言った。
「ここは、意見がわかれるところやし、ワシが客観的な証人を呼んでるねん。
 一同の衆、ここへ呼んでもエエか?」

少しのザワメキの後、野中の提案に一同は頭を上下に振った。
「おいっ」と呼ぶと大広間に死臭の漂うような臭いと共に現れたのが
ドス黒い顔をして流しの着物を着た谷友であった・・・・。


つづく

07/22/2001 森組任侠伝(女組登場!)7
次の日の朝は、鉛色の雲が重々しく空全体を包んでいた。
時折、乳白濁色の雲が、鉛色の空を背景に足早に流れていった。

「今日は一日、こんな鬱陶しい天気かなぁ。」
神崎組の女任侠者の松あけみが甲高い声で言うと、後ろから同じく女任侠者の沢たまみが
「季節の変わり目は気候の変化が激しいしなぁ。」といった。
「そやけど、ワテら女任侠者を永田町の森組事務所に集めるなんて、神崎親分も
何を考えてるんやろ?」
京都の舞子あがりの任侠者・池坊やす佳は、しなりしなりと歩きながら言った。
「けど、ワテはこんな大勢の任侠のお姐さん方と一緒に歩けるのが嬉しいワ」
女任侠見習いのかなえがハシャギながら言った。

そんな会話を続けてる女の集団の先頭には、昨日の夜から覚悟を決めているのか、
厳しい顔の大野ユカリと大森いち子がいた。
お浜達とは、赤坂見附の紀尾井町で待ち合わせをしていたのだが、
生憎、まだ来ていなかったので待つことにした。

お堀に架かる橋の上で、大きな岩と岩の間から生ている向日葵を見つけた池坊やす佳は
「京都では1000年前に組まれた石垣からも、あのように花や草が生えるんどっせ。」
それを聞いたかなえは
「へぇ−、そうなんですか?そやけど、あんな斜めの岩の間から生える花も可哀相。」
「あれも、あの花の宿命なんかなぁ、もっとエエ所に生えたら、あんなに奇麗な花を
もっとみんなに見てもらえるのに・・・。」

感傷にふける2人の話を何気なく聞いていた大森いち子は、
「生命とは感情や。生きたいと思う強い感情があったら、どんな環境も支配するんや。
また、どんなに悪い環境でも一生懸命の気持ちがあったら、人を感動させるんやで。」
大森の話に2人は顔を見合わして、同時に首を捻ると大森は続けた。

「あの向日葵を見てみいなぁ。あんな重い花びらを付けてるのに、途中から茎が
曲がって黄色い花びらが、お天道様の方に向いてるやろ?あれだけでも凄いことや。
あんな斜めの石垣から生えて、頑張って咲いてる向日葵は見たことないで。
ワテらの人生も、あんな厳しい環境で花を咲かせること出来るやろかと、思わんか?」

うなずく2人に「もっと、お堀の上を見てみ−や。」と大森が言うと2人が「あっ」と
声を出した。2人の見上げる石垣の天辺に、なんと向日葵が1本、風に吹かれて揺れていた。

「あの石垣の天辺に咲いてる向日葵の種が落ちてきて、偶然にも
お堀の岩と岩の間に挟まって咲いたんやで、きっとあの向日葵は。
そやけどな、他にも落ちてきた種は一杯あったやろけど、お堀の水の中に落ちて
流されて行ったんやろなぁ。もし、あの斜めの石垣の間から身を曲げながらも
咲いてる向日葵がなかったら、石垣の天辺に向日葵が咲いていたことなんか誰にも
分からんままやったやろ。誰もこんな所で足を止めて、上を見上げへんもんなぁ。」

大森はお堀の欄干に凭れながら2人の顔を見て言った。
「ワテらも、あの斜めに咲く石垣の向日葵と同じやねんで。師匠がナンボ、偉大でも
その師匠の撒いた種を、ワテらが環境が悪いというてやな、斜めの石垣の間からでも、
向日葵の花を咲かせることが出来んかったら、誰もあの石垣の天辺の向日葵、
つまり師匠のことやけど、あの師匠という向日葵を世間様に知らせることが出来んがな。」

息を呑んで大森を見ている2人に微笑みながら言った。
「ほら、また、あの石垣から咲いている曲った向日葵が風に吹かれ、黄色い花びらを
靡かせているのを向こうから来る人達が見てるやろ、ほらな。ほんで、次は必ず、
あの人達は、お堀の天辺を見るんやで、ほら、・・・やっぱり見上げてるやろ?」
大森の指を指す方向には、お浜達、女組任侠者がいた。


つづく・・・・


07/22/2001 森組任侠伝(女組登場!)6
正式に神崎組と森組が連立して巨大任侠組織が出来てから
双方の組同士の交流は頻繁に行われていた。
今まで夜の繁華街に遊びに行くことは禁止だった神崎組の組員たちも
森組との夜の打ち合せとか、付き合いとかの理由で大手を振って出かけていくようになった。

そんな或る夜、いつものようにユカリと大森は歌舞伎町の
S会の町衆の悩みを聞いての帰り道に、バッタリと甲彦と会った。
「これはこれは、姐さん方、ご苦労なっこったすなぁ。ヒック、」
赤い顔して爪楊枝で歯を穿りながら挨拶する甲彦に大森は怒鳴った。

「甲彦!アンタは最近、シマの町衆の声も聞かないで、毎晩々々飲み歩いていて
それでエエとでも思うてるの!」

怒鳴られてもまだ、ほろ酔いで空ろな目をして、身体を揺らしてる甲彦が言った。
「姐さん、ヒック、時代がちゃいまんねん、時代が、ヒック、
今はなぁ、ヒック、ワシらは前みたいな弱小の任侠者や、おまへんねやで。
ゲップ−、今は責任ある任侠集団でっさかい、大店の大旦那衆との付き合いや
お役人との夜の会合で、ヒック、物事をタイキョク的に、フ−、な、なにやったかな?
あっ、そうや、タイキョク的にや、判断して任侠道を進まなアカンねん。ゲップ−」

ユカリと大森はその甲彦の態度に呆れてしまった。
(なんで、神崎組の男たちは、こんなに乱れてしまったのか・・・)
大きな憤りを堪えるため、ユカリの握りこぶしに爪が突き刺さっていた。

そんな甲彦のもとに森組の亀井と平沢が近づいてきて
「甲ちゃん、ナニしてるんや。もう一軒行こ−なぁ、ヒッヒッヒッ、次はなぁ、
美人のおネェちゃんが、ヒック、エエ塩梅に楽しませてくれるとこやねんで。ヒック」
亀井が酔っ払いながら言うと、暗くて甲彦と一緒に居るのが
ユカリ達とは判らないらしく、亀井は続けて言った。

「ヒック、なんや、ここにもオナゴはんがいてるんか、ゲップ−、
オ、オネエ−チャンとこの、ヒック、店は・・・店はナンボや?ゲップ−」
平沢がメガネを外し、卑猥な目つきで嘗め回すように2人のオナゴを見ながら
「はう、ハウマッチ?ヒッヒッヒッ。」と言うとユカリの尻を触った。

次の瞬間、ユカリの握り締めていた拳が火を吹いた。
「バギ−ン」と鋭い音とともに、平沢の血の付いた前歯が2本、宙に浮いた。
続いて、大森の着物からはみ出した、大きな白い右足が亀井の股間に減り込んだ。

うずくまる2人の任侠者を見て、一瞬にして、赤い顔が青くなって、大きな口を開けてる
甲彦の頭の毛を、大森は引きずりながら、その場から連れて去っていった。

「イタタタ、姉さん、勘弁しておくれやす!」
大森に髪の毛を引きずられてる甲彦は、大森の腰の辺りで哀願していたが、ユカリは
「勘弁ならん!オマエが一緒に呑んでたのは平沢やないか!山口ニィさんを刺した
平沢と呑んで楽しいんか!オ−?」
甲彦を怪力で引きずる大森は
「亀井もそうや!あれだけS会の悪口を言うてた男やのに、連立になったら
猫撫で声で迫ってくる節操もない、腐った心の者と呑むとはなんや!ドアホ!」

ユカリたちが、呑み屋界隈の出口に差し掛かったとき、高級お茶屋から出てきた
神崎組長、冬柴若頭ら神崎組幹部数人と森組の森サメ蔵組長を筆頭に村上、青木などの
森組の連中が、高級大型人力車、数台に分れて乗るところだった。

女2人が男を引きずる姿は、周りからも好奇心の目で見られて、ちょっとした騒ぎに
なっていた。神崎や森たちの一向もそれに気づき、森は若い組員を走らせ、その騒ぎの
中心は何かを報告させた。

「ナニィ?女の任侠者と男の任侠者のケンカ?」
森サメ蔵は少し驚いたが、横にいた神崎にこの報告を話した。
「ひょっとして、ワシとこの女組の連中かもしれまへんしなぁ。・・・・
ちょっと、ワシが見て来ますワ」
高級人力車を降りようとしたとき、その騒ぎの中心が神崎の目の前まで遣ってきた。

「な、なんや、やっぱりオマエらか!」

神崎たち一行を見たユカリと大森は、引きずっていた甲彦の頭を地面に叩き付けると
腕組みをして、神崎たちを見下ろした。

呑み屋の赤い提灯や青い提灯の光を背にして立っているユカリと大森を見ている
神崎や森たちの男親分衆には、何故、この2人のオナゴの姿が
大きく見えるのか判らなかった。


つづく・・・

鬼☆劇場
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