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受売新聞本社。 30畳程の社会部デスク。 机の上には山積みされた書類。 天井の大きな扇風機の風が書類をなびかせているが、 8人の記者たちは、各々、団扇で扇ぎながら電話をかけたり、書類整理している。
奥の机に座っている、ビン底メガネの痩せた小柄な男が 背中を丸めて、ハサミで足の爪を切っている。
小泊(記者A)「編集長、昨日の記事の神崎組、女任侠のことですが・・・」 浅井(ビン底メガネ)「どうした?」 小泊「ちょっと、気になりまして、調べたんですけど、お浜たちは、ヤミ米業者とは 面識がなかったようなんです。」 浅井(ビン底メガネ)「それがどうした?」 小泊(記者A)「それって、まずいのではないかと・・・」
浅井(ビン底メガネ)は足の爪を切るのを止めて
浅井(ビン底メガネ)「ナニ?軍部の発表に逆らって、おまえの調べた事を載せるってか?あ−っ?」 小泊(記者A)「そうです。真実と違うことですし、当然・・・・」
突然、浅井(ビン底メガネ)は小泊(記者A)の頭を人指しで小突き
浅井編集長「お前は、まだ青いなぁ。新聞は売れてナンボなんや。そんな危険なマネしたら ワシらメシの食い上げになるんやで!わかってるんか?」 小泊記者「・・・・メシのタネのためにウソを書けって言うんですか?」 浅井編集長「な、なにぃ!いつからお前は神崎組の人間になったんや?新聞社は中立公平・・・」
それを聞いていた兵頭(記者B)は,憤然として立ち上がり、腕組しながら
兵頭(記者B)「そ、そら、ワシかて、自分で調べた真実を読者に訴えたいで。でも、 軍発表の反対の 記事を載せても、それを読んだ国民が、どう判断するかは別問題やで」 浅井編集長「そ、その通りや、ナンボ真実かどうか知らんけど、読者あっての新聞やで」 小泊「わかってます。けど、大本営発表だけでは、国民も判断のしようがありませんがな。」 兵頭「それやったら、軍発表だけでなく、客観的に双方の意見を載せたらどうや?」
浅井編集長、後ろ手で歩きながら、ゆっくりと2人の前にやってくる。
浅井編集長「あのな、双方の意見というたかて、女ヤミ米業者はみんな殺されてるんやで、 しかも、もう片方の、お浜たちも何処に居るのかもワカランしがな。」
得意そうな顔の浅井編集長を尻目にして、兵頭、少し考えて
兵頭「おい、小泊、お前、さっき、ヤミ米業者のことを調べたというたなぁ」 小泊「はい、殺されたヤミ米業者の仲間が逃げ延びて、ワシの知り合いの所に居るんですワ。」 兵頭「そうか!それやったら、早速、取材して言質を取るんやで。ワシはS会の方を当たるワ。」
それを聞いた小泊は瞳を輝かせ
小泊「は、はい、」
目と目で合図した兵頭と小泊は、荷物を持って出かけていく。 浅井編集長は、唖然と見送る。
浅井編集長「お、おい、兵頭、小泊・・・く、くそっ!ワシに逆らうヤツは今度の人事で仕返ししたる!」
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